第79話 ゴブリン村
10月に入って初めての休みだ。先日の騎士団長の報告を受け、アレンは白竜山脈の麓までやってきている。厳密に言えば、この辺りは既に山脈の裾野ということになるが。
この森から白竜山脈が始まり、何日か歩いていくと段々傾斜は厳しくなっていき荒涼とした山脈に風景が変わっていく。
この森の部分の至る所にゴブリン村とオーク村がある。鎧アリの巣はもう少し先の荒涼とした山の斜面にあり大きな穴を作って暮らしている。
今日はゴブリン村を1つ討伐する予定だ。あと数日で騎士団が到着しそうなゴブリン村を選定した。経験値を騎士団に譲るつもりはない。
なお、当面はゴブリン村の討伐を中心にやっていく予定だ。
ゴブリン村の村長であるボスは、ゴブリンキングと呼ばれるCランクの魔獣だ。Cランクなので余裕で倒せそうと考えている。
しかし、オーク村の村長であるボスは、オークキングと呼ばれるBランクの魔獣だ。マーダーガルシュと鬼ごっこしたアレンにとってはまだ早いという判断だ。少なくともゴブリン村を討伐して、経験を積んでから挑戦しようと考えている。
そして、鎧アリの巣であるが、こちらもかなり厳しい。巣には1000を超える鎧アリとその女王がいるらしい。女王蟻はBランクの魔獣という話だ。
女王鎧アリを倒し、鎧アリを掃討すれば、この穴を手に入れることができる。数の多さや穴の中に入るという状況はオーク村以上に難易度が高い。
だが、鎧アリの巣の討伐には大きなメリットがある。あの巨体が通る巣穴はとても大きく、更にミスリルの鉱脈まで続いている可能性もあるそうだ。鎧アリを殲滅すれば、人間が余裕を持って入れるような山脈に設けられた坑道が手に入るというわけだ。実際、今4つある採掘地も、うち2つは元は鎧アリの巣だ。
アレンは共有した鳥Eの召喚獣が捉えたゴブリンの村の前にいた。空には複数の鳥Eの召喚獣が旋回し、ゴブリン村の全体を観察し続けている。
(さて1体残らず殲滅するぞ)
ゴブリンの村は柵のようなもので囲まれていた。粗雑に組まれたその柵には門があり、2体のゴブリンが守っている。
(よし、行け! ベアーたち!)
4体の獣Dの召喚獣が門に向かう。召喚獣に気付いた2体のゴブリンを瞬殺する。既にDランクの魔獣にはほぼ負けない。
当然、強化と魚Dの特技「飛び散る」をかけてある。
異変に気付いたゴブリンの1体が櫓から鐘を鳴らす。けたたましい鐘の音とともに4体の召喚獣が村の中に入っていく。
ボロ布と木の棒で作った家からゴブリンたちがワラワラと出てくる。迫りくるゴブリンたちを特技「かみ砕く」でかみ砕いていく。
すると塀や櫓の上から弓を持ったゴブリンが現れる。遠距離から攻撃をしようということだろう。そんな遠距離攻撃をするゴブリンに虫Dの召喚獣達の特技「蜘蛛の糸」で動きを封じていく。ゴブリン相手だとデバフはよく効く。
(遠距離攻撃いいな。俺の召喚獣は今のところ、遠距離攻撃が何もないからな。遠距離攻撃、範囲攻撃を手に入れたいぜ)
櫓の上で、糸で真っ白になったゴブリンが持つ弓を見ながら遠距離攻撃を羨ましく思う。バフができる召喚獣が手に入ったことはうれしいが、やはり遠距離攻撃、範囲攻撃が狩り効率を圧倒的に向上させる。
アレンも村の中に入っていく。200から300のゴブリンがいる村のようだ。門から入ってきたアレンが召喚獣とゴブリンとの戦いの様子を見る。
(ふむやはりこんなに多かったら、取り逃がすな)
今回初めてゴブリン村を襲撃している。共有による召喚獣隊だけでゴブリン村を掃討できるか検討したが、無理なようだ。こんなに多いと半分くらい取り逃がしそうだ。できれば全て倒してしまいたい。
ゴブリン村の掃討については、召喚獣を何体も出せる自分がいる時にしようと考える。
(さて、さくさく倒してしまうぞ。ベアーたち出てこい)
さらに6体の獣Dの召喚獣が出てきて、元居た4体の獣Dの召喚獣に加わりゴブリンたちを倒していく。
ゴブリンたちが圧倒的な速度でやられていく。一部のゴブリンが後方より撤退を始める。
すると、アレンが入ってきた村の入り口とは反対側からさらに10体の獣Dの召喚獣が現れる。
村の反対側に待機させ、鐘が鳴ると村に入ってこいと指示をしていた。そのためにゴブリンの鐘は止めなかった。
挟み撃ちにしてどんどん数を減らしていく。
すると、ひときわ大きなゴブリンが出てくる。1.5メートルほどのゴブリンと違い、2メートルほどのいかついゴブリンだ。大きなバトルアックスを持っている。
(お! ゴブリンキングだ)
他のゴブリンたちを押しのけ迫ってくる。
『グガアアア!!!』
虫Fの召喚獣も特技を使い、獣Dの召喚獣が囲むように倒す。
どうやら特に問題はなさそうだ。
(やはり、さくさく狩れるな。ゴブリンキングはCランクの魔獣らしいしな)
Cランクの魔獣はもう何千体も倒してきた。ゴブリンキングでも同じCランクの魔獣なので問題ないようだ。ついにはバトルアックスを落とし倒れる。
『ゴブリンキングを1体倒しました。経験値4200を取得しました』
ゴブリンキングを倒した後、さらに残っているゴブリンを倒していく。囲むように獣Dの召喚獣により一掃し終えた。
(よし倒しましたと、さて建物の中にまだいないかな?)
悪臭のするゴブリンの家に入っていく。特に何もないようだ。
(ベアーたちは2体ほど俺についてきて、残りは村の中央にゴブリンを集めていて)
獣Dの召喚獣に指示をしながら、ゴブリンの家を物色していく。
(さて、ゴブリンの怯える子供が出てくるのかなと思ったが、そういうことはないな。さっき狂犬のように襲ってきたし)
ゴブリン村には未成熟な子供ゴブリンがいるだろうと思っていた、怯えた子供ゴブリンがいたらどうしようかと考えていた。実際は小さなゴブリンも年を取ったゴブリンも狂犬のように全力で襲ってきたため、他のゴブリン同様に倒した。ゴブリンは人間を見たら殺意しか湧かないようだ。
そんなことを考えていると、1つの建物の中で眉を顰める。
どこかで攫ってきた人間の死体だった。何体もあり、ほとんど白骨化していたり生きている者もいない。
(やはり、滅ぼさないとな)
ゴブリンは貴重な経験値だ。ゲーマーであった前世だと、ゴブリンの数を減らしてしまって勿体ないという気持ちがあってもおかしくない。しかし、その考えのままゴブリンの村を放置しても犠牲が増えていくだけだ。改めてゴブリンの村は殲滅しようと考える。
人間の死体も召喚獣にお願いして村の中央に集める。
アレンは、ゴブリンから魔石を回収する。Dランクの魔石は草の召喚獣の特技「魔力の実」など貴重な使い道がある。全て回収する。ゴブリンキングのCランクの魔石も回収する。
2時間ほどかけて全て回収し終わった。
(ベアーたち、家の建材を持ってきて)
ノシノシと歩きながら、獣Dの召喚獣達が家に使われていた柱だの、布切れだのを持ってくる。ゴブリンの死体の山の上に被せるように指示をする。
建材をゴブリンの死体に置かせたら、収納から松明を取り出す。この松明は火が点いたままだ。火が点いたものも収納していられる。
ゴブリンの死体の上に積まれた建材に松明で火をつける。次第に大きな火柱が上がる。数日後、腐乱したゴブリンが散乱する村に騎士団が到着し、感染症を引き起こすかもしれない。一か所にまとめて燃やしてしまう。
(さて、さらわれた人間についてはどうするかな。火葬して埋めてあげてもいいんだが、騎士団のやり方は別にあるかもだしな。綺麗に並べて騎士団に任せるか)
あまり余計なことをして迷惑をかけても仕方ないと思った。
(さて、ゴブリン村は余裕そうだしとっとと殲滅だな。そのあとオーク村にも挑戦だ)
ゴブリン村の殲滅は問題ないと実感できた。まだまだある白竜山脈の麓でのゴブリン村掃討が始まったのであった。
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