第75話 共有②
共有スキルの可能性を考える。
(これってもしかして、召喚獣に狩りをさせることができるんじゃないのか? 召喚獣隊とか作れないかな?)
今現在、この広い場所を必死に移動して回って狩りをしている。鳥Eの召喚獣を使って、魔獣を見つけ、走って向かい、そして倒すのを繰り返している。
この共有で50メートル以上離れても召喚獣に指示ができたということは、召喚獣だけで狩りができる可能性がある。もし、召喚獣に別行動をさせたら、狩り効率が果てしなく上がる予感がする。なぜなら、召喚獣は一度召喚すれば30日連続して召喚していられるからだ。
アレンが館にいる間もずっと狩りが可能だ。
(まずは何体まで共有できるのか調査が必要だな。ホークたち出てきて)
目の前に新たに3体の鳥Eの召喚獣が出てくる。それぞれに共有をしていく。
(これで4体のホークと共有できたな。視界が5個になったけど違和感がない件について)
前世の頃も多重起動を駆使して1人で4キャラを操作するゲーマーはいた。健一だった頃、自分は2キャラが限界だったことを思い出す。しかし、鳥Eの召喚獣4体とアレンの5つ分の視界が広がるが、視界に負担が一切ない。当たり前のように5つの視界を同時に理解することができる。
(多重起動というか並行思考だな。よしよし、ホークはもうないからタマたちを出していくか)
1体ずつ出して、共有していこうとする。その時だ。
「ぶっ! いたたああああ!!」
6体目の召喚獣を共有していると頭に激痛が走った。あまりの痛さに頭を抱え地面に転げる。慌てて、6体目の共有を切る。
(へ? 消えた? 死ぬかと思った……。というか共有って普通に切ることができるんだな。6体目で激痛が走ったな。6体の共有は無理なのか?)
意識すれば、共有はいつでも切ることができることが分かった。そして、鳥Eの召喚獣4体のあと、獣Eの召喚獣を2体目、合わせて6体目の召喚獣を共有したところ激痛が走った。
強い頭痛が走り、痛みで共有どころではなくなった。
(これは同じランクの召喚獣は5体までってことか?)
痛いのは怖いが、どうしても共有できる召喚獣の数を調べなくてはならない。恐る恐る、虫Eの召喚獣のカードを消して、虫Gの召喚獣を生成召喚してみる。
(よし、じゃあピョンタに共有っと! ぶっ!)
共有6体目の召喚獣である虫Gの召喚獣を召喚し、共有をしたらひどい激痛に襲われる。
(無理なのか。ランクに関わらず5体しか共有できないってことか? むう、何故なんだ?)
アレンは召喚レベルが上がり、召喚獣を50体召喚できるようになった。しかし、共有できる召喚獣が5体に留まるのは非常に残念だ。何故召喚獣が5体なのか考察する。
情報が足りないので、ステータスをもう一度確認する。
(共有は収納と同じでスキルレベルって概念がないな。これだけ見るとスキルに成長性がないから5体のまま変わらないと思えるな。いや理由もなく5体しか共有できないって意味分からんぞ。何故5体なんだ?)
アレンは考える。理由もなく5体なのか、何か条件があって5体なのか、条件があるならそれはなんなのか考える。
(レベルが上がればもっと増えるとか? 今レベル31なんで、レベル6ごとに召喚獣を共有できる数が増えると。あとはえっと、ん? これって知力か)
1つ大きな閃きが起きる。現在5体の共有をしたまま考察をしている。かなりの頭の負担だ。そして、6体目を共有しようとしたらまた頭痛が発生した。全て頭の中で起きている。
知力が現在、加護も合わせて1075ある。この知力の大きさで共有する召喚獣の数が変わるのかもしれない。レベルを上げるより先に検証できそうだ。
(もし知力が条件なら、知力200当たりで1体共有できるって考えることができるな。知力を上げてみるか。Dランクでいいか)
せっかく枠が広がりDランクの召喚獣を作れるようになったので、鳥Dの召喚獣を増やしていく。目指すのは知力1200だ。考察が正しければ、知力200当たり1体の召喚獣と共有できる。知力1200なら6体目の召喚獣とも共有できるはずだ。
(よし、草Dについては後で検証するとして、知力1200になったぞ)
まだ虫Gの召喚獣は召喚したままなのでアレンの横にいる。
(よし、ピョンタ共有だ)
頭痛になったらすぐに共有することを止めようと、激痛を最小限にする心構えをする。
するとそれが杞憂に終わり、今までで一番低い地面擦れ擦れの視界が広がる。
「おおおお!!! 6体目の共有ができた。知力だ! 共有は知力依存だ!! 知力200で1体か」
検証がうまくいくと、感動するものだ。アレンは1人歓喜の声を上げる。
それから1時間が経過する。
共有の検証がおおむね終了した。
・消費魔力なし
・知力200につき1体の召喚獣に共有が使える
・意識が召喚獣の中に入り特技を含めた指示ができる
・共有した召喚獣を経由して別の召喚獣への指示はできない
・共有するのは視覚と聴覚(味覚は検証していない)
・共有するには50メートル以内に召喚獣がいる必要がある
・共有の解除は50メートル以上離れた位置からでもできる
・知力100以下の召喚獣は共有しても指示は受け付けない
・共有している状態なら50メートルを超えて召喚獣をカード化できる
・50メートルを超えてカード化したときのカードは自動的にホルダーに格納される
(まあ、こんなものかな。操作ではなく、あくまでも指示であると。俺が召喚獣になるわけではないと)
共有するとアレンは召喚獣に指示をすることができるが、あくまでも指示だ。アレンが召喚獣を操作するわけではない。だから、指示をして召喚獣が動き出すにはタイムラグがある。アレンの考えに近い動きをするのはイメージのレベルで意識が共有できているからではと予想する。
(あとは50メートル以上離れた位置で魔獣を倒しても俺に経験値が入ると)
召喚獣隊を編成するに際し、50メートル以上離れたところでは経験値が手に入るか確認したが、普通に経験値は入った。50メートルを超えての経験値取得は問題なさそうだ。
(そうか、これが召喚士の知力の使い道だったんだな)
去年の11月に従僕1周年記念で魔法の授業を受けたことを思い出す。
あのころは、魔法を使えないことにショックを受けたが、知力Sにはとんでもない意味があった。
(魔法使いも魔導士もきっと知力が高い。その知力を以ってあんな難しい記号を暗記して魔法を発動する)
魔法の授業の際、幾何学的で複雑かつ無数にある記号を暗記して、魔法を発動するのだと教えてもらった。
アレンが前世で健一だったころのゲームでは、魔法を使う職業は、知力であったり、かしこさであったりが高いことが多かった。それは難しい魔法を使えるからだと漠然と考えていた。
この世界の知力やかしこさの高さにはちゃんと意味があることを知った。
複雑な記号の暗記、召喚獣の視界を複数同時に把握するなど、常人の知力では到底できないことを可能にするため、知力の高さがある。
(共有してできることは、しっかり検証しておかないとな。さてDランクの召喚獣の検証をするか。Dランクの魔石は大量にあるから、さくさく検証するぞ)
共有によって召喚士の活動に大きな広がりを感じる。次はDランクの召喚獣の検証をするのであった。
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