5月7日Ⅹ(6)

「架那ちゃん帰ろー」

「うん」

放課後、久しぶりにいつも通りに詩歌と帰ろうと教室を出ると、くいくいと袖を引っ張られて後ろを振り返ると蘆花さんがいた。

「あ、あの」

「ん?」

教室から出てくる人たちから離れるようにして、階段の踊り場へと向かう。

気がつくといつの間にか詩歌はいなくなっていた。

逃げた・・・。

そんなに苦手なのか。


「急にすみません、架那さん」

「あれ?私蘆花さんに名前言ったっけ?」

「あ、いえ。Dr.カンフルこと楠木架那さんですよね?」

あ、私のことを先に知ってただけか。

「じゃあ詩歌のことも知ってた?」

「あ、いえ。詩歌さんって言うんですね・・・」

詩歌のことは知らないんだ。

なるほど。

と言うかこの子さっきよりテンション高めだよね。

何か良いことでもあったのだろうか。

「私、架那さんに憧れているので、お会いできて光栄です!」

声は小さいながらも明らかに元気のある声で蘆花さんは言う。

推しに会った的なテンション、なのかな?

私に憧れ?恥ずかし。

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