5月6日Ⅹ(11)

朝食を終えると、3人で汀さんのいる病院まで歩いて行った。

「師範ご無事ですか!?」

詩歌が、汀さんの病室に血相を変えながら全力で入って行く。

「お前の声は傷口に響く・・・」

いててと苦笑とともに汀さんがぼやく。

その姿を見て愛奈さんはくすくすとおかしそうに笑っていた。


「愛奈様、架那様。まずはお2人とも本当にお疲れ様でした」

「いえ、私は別段何も。頑張ってくれたのは他の二人ですよ」

「いえ、そんなことはありませんよ。架那さんは十分と言って良いほどお役に立ってましたから」

汀さんの労いの言葉に、私が返答するも、愛奈さんに優しくフォローされてしまう。

本当に何もしてないようなものなのになぁ。

「それと詩歌。お前は本当によくやってくれた。改めて礼を言わせてもらう、ありがとう」

「いえ。師範がいなければ、私はあのまま何度も失敗したと思いますから、私は別にそんな・・・」

詩歌は汀さんにはにかみながら答える。

「そうか?なら先程のありがとうは取り消させてもらうが」

「いえやっぱり私がんばりました。もっと褒めてください!」

「はは。嘘だよ」

「もう」

二人は揃って顔を見合わせて快活に笑い合う。

全く仲がよろしいことで。

羨ましいですな。

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