5月6日Ⅹ(5)

「あ、架那ちゃん! おはよう!」

「あ、う、うん。おはよ」

何事もなかったかのように、いつも通り無邪気に笑う詩歌の笑顔に少し気後れしてしまう。

「待っててね、これあと200で終わるから」

詩歌は、また素振りへと戻った。

シュッ、と木刀が風を斬りながら、勢いよく振り下ろされる。

朝日に照らされて、刀を振る詩歌は、まるで一枚の絵画のように美しかった。


「そろそろ朝ごはんにしよっか」

「あ、うん」

軒下で詩歌に見惚れていると、不意に声をかけられて適当な返事をしてしまった。

「ふー、疲れた」

「あ、朝ごはんね。準備するよ準備」

道着の袖で汗を拭って、こちらに来る詩歌から逃げるようにして、私はダイニングへと戻って行った。


「架那ちゃん、今日朝ごはん何?」

「あ、えっと、卵料理が主かな。卵多いし」

「はーい」

詩歌は献立を聞くと、汗で濡れて重たくなった道着を脱いで、タオルで軽く汗を拭い出す。

私は詩歌を直視できずに、つい目を逸らしてしまう。


「あ。私、愛奈さん起こしてくるね」

私がいそいそとドアに向かって、廊下に出ようとしたところ、詩歌に袖をきゅっと掴まれた。

「待って…」

詩歌は弱々しく私を引き止めた。

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