ロートスの木

5月6日Ⅹ(4)

「あれ、私なんで寝て・・・」

まずい。昨日の記憶が、な、いわけでは無かった。

愛奈さんの別荘に戻ってきて。

愛奈さんが汀さんの見舞いに行って。

詩歌と話をして、そこで———。

——っっ!


今完璧に全てを思い出した。

そうだ、あの時綺麗な夜空の下で、詩歌とキスを—。

はっず。え、やば。

思い出すだけで死ねる。

いや、その、ね?嫌なわけじゃないんだよ?

むしろすごい嬉しいんだけど、その。

こ、心の準備が・・・。

できてなかったものでして。

はい。


ま、まあまあ、それは良いとして。

その後、詩歌がパッと別荘に帰ってしまったので、私はおぼつかない足取りでフラフラとここに戻ってきて、寝たんだ。

うん、そう。完全に思い出した。

とりあえず顔洗いに行こっと。

私は、とりあえずのそのそと布団から這い出ると、階段を降りて一階へ向かった。


ブンブンと、何か風を切るような音が、誰もいない静かなリビングに響いていた。

庭から音がする?のか?

私は、フラフラと窓へと歩いて行って、カーテンを開ける。

「まぶしっ」

つい朝日の眩しさに声が出てしまった。


明順応が無事機能し、再度庭を見ると、胴着で木刀の素振りをしている詩歌の姿が目に映った。

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