5月5日Ⅹθ(39)

「神坂、少しこっちへ来い」

「は、はい!」

私が通話を終えたタイミングを見計らって、師範が声をかけた。

「私は恐らくこの後、病院で手当てを受けねばならない。お前が愛奈様や、楠木様に、ここで起きたことを正確に伝えるんだ」

「はい、わかりました」

私の言葉一つで、伝わる状況が変わってしまうのかもしれない、と思うと少し身震いした。

「まず第一に伝えるべきことは、裏切り者は佐藤だったと言うことだ。佐藤は、自分の身代わりを用意し、そいつを爆死させたところを見るに、裏切り者が自分だと晒し、偽装死をでっち上げることが目的だったと思われる」

「確かに、あのまま戦闘になって殺した後から覆面をはいだら、残るのは佐藤さんの顔をした死体だけ。

それにもし、今回みたいに尋問をしたとして、今回の師範が見せたような鋭い洞察力がなければ、あれがダミーだと気付かなかっただろう、と言うことですか」

師範は私の解釈に小さく頷く。


「佐藤がどこまで狙ったのかは知る由もないが、我々は佐藤が裏切った末死んだ、と理解したように見せかけるのが恐らく今後のアドバンテージになる」

「わかりました、そう伝えます」

師範は私の返答に、力強くうなづいた。

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