5月5日Ⅹ(38)
「架那さん、お電話。詩歌さんからです!」
「ハンズフリーにして私にも聞かせて!」
食事も、最後デザートに差し掛かっていた時、愛奈さんの携帯が着信を告げた。
私も慎之助さんも、愛奈さんが卓上に置いた携帯に顔を寄せる。
「もしもし、三和さん? 架那ちゃんは無事?」
「ええ、こちらは何ともありません。そちらは!?」
「私は大丈夫だけど、師範が私を庇って怪我を。すぐに救急車をお願い」
良かった。
詩歌は無事だったみたいだ。
汀さんは怪我をしてしまったみたいだが、大丈夫なのだろうか。
なんとか無事でいて欲しい。
「では、救護班はこちらですぐに手配する。おそらく5分程度で着くはずだ」
「ありがとうございます!」
慎之助さんが詩歌に冷静に告げる。
詩歌は安堵したような声で返事をした。
「君も救護班に処置をしてもらうといい、楠木くんと愛奈は私が責任を持って熱海に送り返す」
「了解しました、お願いします!」
詩歌は端的に返事をすると、無駄話を一切せずに通話を切った。
かなり切羽詰まった状況なのだろう。
「では約束通り、楠木くんと愛奈は熱海へ送ろう。クルーザー今手配するから待っているといい」
「ありがとうございます、お父様!」
「ありがとうございます!」
頼もしい慎之助さんに、私たちは揃ってお礼を言った。
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