5月5日Ⅹθ(35)

「次に、お前の知り合いの名前を順に思いつく限り言え。ただ、数を誤魔化されるといけないから、指を折りながらやれ」

「でも、手は神坂さんに固められてて動かせないんだけど」

佐藤さんは、ニヤニヤと当て付けのように言う。

「神坂、右手だけ動かせるようにしてやれ。下手な動きをしたら切り落とすから安心しろ」

「わかりました」

私は師範の指示通り、右手だけ拘束をやめた。


「えっと、まず三和・アウローラ・愛奈様でしょ、次に、貴女汀桜子と——」

佐藤さんは、人差し指から順にたてて行き、名前を次々淀みなく上げていく。

「で神坂ぅぐあっ」

途端、師範は佐藤さんの腕を蹴飛ばして、床に踏みつける。


「お前今、人差し指から数え始めたな?残念ながら本物の佐藤実花はイタリア帰りでな、親指から数を数えるんだよっ!」

師範は、足の裏で腕をグリグリ踏みつけながら言う。

そう言えば、以前架那ちゃんと三和さんでお泊まり会をした時に、点数の数え方の違いを架那ちゃんが教えてくれたことがあったっけ。

イタリアでは人差し指から数える日本とちがって親指から順に数えるんだ、って。

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