5月5日Ⅹθ(34)

「はあっ、はあっ」

私は荒い息を抑えながら、相手の腕に力を込めて、ダガーを手から離させると、基本の寝技、横四方固めをかけた。


「よくやった神坂。完璧な立ち振る舞いだった」

師範が、肩を回しながら言う。

「・・・いえ、まだまだです」

私は相手を固めながら返事をする。

「じゃあ、そのまま押さえつけとけよ」

「了解です」


師範は私に指示すると、暗殺者の横に回った。

「このマスクの下を見せろ!」

目だけが見えるタイプのマスクを剥ぎ取ると、その素顔は佐藤実花だった。

「やはりお前だったか、佐藤」

「神坂さんも、汀さんも強いね、私じゃ勝てないよ」

佐藤さんは不適に笑う。

「無駄話はいいから、私の質問にだけ答えるんだ。いいな?」

「はぁい」

緊張した師範とは真逆に、気の抜けるような返事をする佐藤さん。


「ではまずお前の名前、生年月日を言え」

「佐藤実花、2000年、5月20日生まれ」

個人情報を尋ねる師範に、何の淀みもなく答える佐藤さん。

師範は、影武者である可能性を探っているのだろうか。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る