5月5日Ⅹθ(33)

滅多に見かけない剣道の二刀流の構えに、少し動揺したような相手に向かって勢いよく走り出した。

大刀の剣先を相手の喉と自分の目とを結ぶ直線上に静かに置き、同時に腰を一歩前に進めながら大刀を持った手首を僅かに内側にひねって突く。

二刀のリーチを生かした突き技を繰り出す。

小刀も大刀の動きに合わせて相手の胸を突くような心持ちで前に前に同時に突き出す。小刀で中心を守ろうとする相手のダガーを押さえて封じ込める。

瞬間、両手が私の防御に回ったタイミングで師範の右掌底突きが相手の右横腹を正確に打ち抜く。

「ぐっ・・・」

初めて明確に技が決まる。

よかった、ちゃんと使えそうだ。


「このまま行きます!」

右足の踏み込みと同時に左腰を前に出す意識を持って、右手の大刀で打ち込む。

それと同時に小刀は左腰に引きつけ、左肘で後方を肘打ちするようなつもりで打つ。

基本の正面打ちだ。

二刀目を防ぎきれなかった相手が一歩後退した瞬間、私が左横に半身で流れる。

その隙間を縫うようにして師範が右上段突き、中段突きをほぼ同時に叩き込む。

私は、即座に太刀を床に離すと、上半身がのけぞった相手の腕を掴んで、巴投げを決めた。


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