5月5日Ⅹθ(32)

「せいっ!」

「てやぁっ!」

師範が相手の中段に正拳突きを打ち込むと、すぐさま私は小手を振り抜く。

しかし、両方とも左右に構えたダガーで綺麗に勢いを流されてしまう。

「はぁっ!」

「ていやぁっ!」

師範の回し蹴りと、振りかぶった面突きもかわされてしまう。

私は、3歩勢いよく後退して間合いを取る。

と、視界の端に、短い棒が落ちているのが見えた。


「師範! 一旦下がってください!」

私は師範に叫ぶと、全力で師範のもとへと走る。

「どうした! 神坂!」

「一つ妙案が思いついたので、試してみようかと」

私は師範と背中合わせになりながら答える。

同時に、足で短い棒を掻き寄せて、拾い上げる。


「私は二刀流で行きます。今のままじゃ相手に防御され続けるのがオチです」

「お前、二本使えるのか? 日本剣道の取り決めだと、大学生以下は試合で二刀流は禁止されているはずだが」

師範は当然の疑問を投げかける。

「試合では使ったことはありませんが、父に昔から指導を受けていたので、使うことは可能です。試してみる価値はあるかと」

「わかった。だが、無理だと感じたらすぐ一本に戻せよ」

「はい!」

師範の許可を得た私は、右手に長い太刀を持ち、上段に構える「正二刀」の構えを取った。

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