5月5日Ⅹ(19)
「入りたまえ」
「失礼します」
障子の奥から呼ばれ、私は恐る恐る部屋に入った。
「ここに座りたまえ」
愛奈さんのお父さんこと三和慎之介さんに、向かいにおかれた長椅子に座るよう言う。
その長椅子の左端には愛奈さんが座っていた。
慎之介さんは見た目すごく若い。
おそらく30代あたりではないだろうか。
近所のお兄さんと言っても通じそうな若さだが、正面に向かって座っている威圧感がそれを良しとしない。
「今日は遥々ご苦労。楠木架那君だね」
羽織っている浴衣の裾を正しながら慎之介さんが労いの言葉をかけてくれる。
「あ、はい。お世話になっております」
こういうときって何を言えばいいんだかわかんない。
「いつも私の愛奈が世話になっているね。この子は少し前のめりになってしまうところがあるからね」
「それはあるかもしれませんね」
「もう、お父様。余計なことは言わなくていいのですよ」
私が首肯すると、愛奈さんは膨れる。
それを見て慎之介さんは微笑する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます