5月5日Ⅹ(19)

「入りたまえ」

「失礼します」

障子の奥から呼ばれ、私は恐る恐る部屋に入った。

「ここに座りたまえ」

愛奈さんのお父さんこと三和慎之介さんに、向かいにおかれた長椅子に座るよう言う。

その長椅子の左端には愛奈さんが座っていた。

慎之介さんは見た目すごく若い。

おそらく30代あたりではないだろうか。

近所のお兄さんと言っても通じそうな若さだが、正面に向かって座っている威圧感がそれを良しとしない。


「今日は遥々ご苦労。楠木架那君だね」

羽織っている浴衣の裾を正しながら慎之介さんが労いの言葉をかけてくれる。

「あ、はい。お世話になっております」

こういうときって何を言えばいいんだかわかんない。

「いつも私の愛奈が世話になっているね。この子は少し前のめりになってしまうところがあるからね」

「それはあるかもしれませんね」

「もう、お父様。余計なことは言わなくていいのですよ」

私が首肯すると、愛奈さんは膨れる。

それを見て慎之介さんは微笑する。


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