5月5日Ⅹψ(15)

「5月4日に三和の誰にも見つからずに、四咲家に圧力をかけられる人間。かつ、情報が一蹴されていないところから察するに、三和の中でもかなりの上層部の人間、それが候補として考えられると思います」

「その条件に該当するのが、佐藤実花だと?」

「その通りです」

お父様は小さく頷き、目を瞑って思案なさる。

「確かにその推理は間違っていないと思う。ただ、証拠がない、と言うことか?」

「ええ、そうです」

「なるほどな」

私たちは揃って宙を見つめました。

お互い、困った時には宙を見つめる癖が昔からありました。


「三年前にも話したことだが、佐藤実花の素性は我々が余り把握できていないところがある。佐藤実花とあの日イタリアで出会ったのは、全くの偶然だったしな」

お父様は過去を振り返るように、遠くを見ながら呟きました。

「ええ。ですが、証拠集めのために佐藤の家に押し入ると言うのも。その、蘆花よしかさんがいらっしゃることですし」

「佐藤実花の妹か。確か愛奈と同い年だそうだな」

「ええ。もし佐藤が無実であったときに、蘆花さんに弁明する言葉がないですから」

私は、その場面を想像して、いたたまれない思いに襲われました。

「かなりナイーブな性格なようだしな、あの子は」

「はい」

今この状況は、かなり次の手をどう打つべきか悩ましいのでした。

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