5月5日Ⅹψ(14)

「失礼いたします」

私は、障子の前で一礼すると、静かに部屋の中へと入りました。

「久しぶりだな、愛奈。元気か」

「ええ、私はなんとも。ですが、お父様はお体が優れないと伺ったのですが、大丈夫なのですか?」

「ああ、なんとかな。前置きはいいから、さっさと本題に入ろう。その方がお前も楽だろ?」

「ええ、お気遣い感謝いたします」


お父様は、私の胸中を見透かしたかのように的確に言いました。

「まだ確証はないのですが、以前から噂されていた四咲家の鼠、と言うのが佐藤、佐藤実花かもしれません」

「ほう。そう考えた理由は?」

お父様は私に話の続きを促します。

「四咲グループに、三和家からの外部圧力がかかったらしく、昨日5月4日に、ある四咲グループの子会社が倒産。社員たちが一斉抗議を行なっていると、本日、河津に詩歌さんと向かっていた汀から連絡がきました」

「三和からの外部圧力?そんなもの聞いていないが」

お父様は不思議そうに首を傾げなかがら、私に問いました。

「ええ、そこがポイントなのです」

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