5月5日Ⅸ(1)
別荘の近くに車がついた時、時刻は24時を回って、5月5日になっていた。
「汀、佐藤さんを別荘の中へ入れてください。
大事な話があります」
「了解しました」
焦りを滲ませる声で愛奈さんが汀さんに指示を出すと、汀さんは携帯を操作しメッセージを送信する。
それにどこか詩歌もひどく緊張しているように見える。
確かに言われてみると佐藤さんが会場から姿が見えなかったが、先に戻っていたのか。なるほど。
別荘に車がつくと、愛奈さんは詩歌と汀さんと共に奥の小部屋へと入って行った。
私もついていこうとしたら、詩歌はいいよと言ってくれた。
愛奈さんはかなり驚いていたようだが、そんなに意外だったのかなぁ。
「あの、詩歌さん、架那さんを呼んでも良かったのですか?」
「架那ちゃんにも話を聞いてもらわなきゃかなって思って」
詩歌はあっけらかんとして言う。
「でしたら少し二人で話をさせてください」
「わかった」
「すみませんが、詩歌さんと少しお話をしてきます」
「うん、いいよ」
詩歌と愛奈さんは連れ立って廊下に出ていった。
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