5月5日Ⅵ(16)

息も絶え絶えに走って向かった私たちを待っていたのは、憔悴しきった表情で座り込んだ愛奈さんだった。

三和グループの文字が入った救急車も広場に止まっている。

「師範は!?」

叫ぶ詩歌に、愛奈さんは左手側に止まっている救急車を指す。

詩歌は荷物を地面に投げ捨てて走り出した。


「愛奈さん大丈夫?だいじょばないよね?」

「架那さん・・・」

愛奈さんは泣きはらしたような腫れた目で見つめてくる。

「辛かったよね」

私にできることは、壊れそうな愛奈さんをただ抱きしめておくことだけだった。


「っあ゛ぁああああっああったああああああ!!!」

憔悴しきった愛奈さんの元で座り込んだ私の耳に詩歌の悲痛な叫び声が聞こえてきた。

星々が瞬く仄暗い夜空に響き渡る、詩歌の号哭が。



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