5月1日Ⅵθ(11)

三和さんは私の手を握って言う。

「ですが、そんな詩歌さんだからこそ、架那さんも信用なさってくれているので

 はないでしょうか」

「私だから・・・?」

「はい。他人のために自らの犠牲を厭わない。けれど優しくて自分や他人思い。

 そんな詩歌さんを架那さんは理解しているからこそ、信用なさっているのだと

 私は自らの目で見てそう思いました」

三和さんは私の手を握る両手に力を込める。

「だからこそ、私はそんなお二人がとても眩しくて、とても羨ましいのです。

 ですから無理に自分の心を押し込めず、詩歌さん自身が納得いく答えが出るま

 で、無理に納得されることはないと思います。

 こんなことしか言えなくてすみません」

三和さんははにかんで言う。

「そっか。うん。

 ならそうしてみる、ありがとう」

「いえ、どういたしまして」

私は私。

神坂詩歌だ。

ありのままの神坂詩歌で、自らの心に決着をつけよう。

きっとそれが−。

いや、今答えを出さなくても直にわかる。

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