5月1日Ⅵθ(10)

「架那ちゃん。私三和さんと少し話があるから、先あがっててもらってても

 いい?」

「分かった」

架那ちゃんはそれだけ言って、浴室から出て行ってくれた。


「お話とはなんでしょう」

改まって三和さんが尋ねてくる。

「私、貴女のことどう思ってるのか、自分でもよくわかんなくなってきちゃ

 った」

「私のこと、ですか」

「そりゃあ、貴女が原因で架那ちゃんは誘拐されるし、私はその度自殺して。

 で、なんとかなったかなぁと思ったら、架那ちゃんは貴女のこと信用してる

 みたいだし」

それに。

「それに、今こうやって話したり、さっきみたいに洗いあったりして、どこか

 貴女のことを信用できる、って思ってる私もいて。

 自分でもなんだかわかんないんだよね。ごめん、どうしようもないこと

 言って」

「いえ構いませんよ」

三和さんはそう笑顔で言う。

「詩歌さんに、今までのこと全て無しで一緒に行動して、なんて厚かましいこと

 は到底言えません。貴女の苦しみは全て見てきました。

 そのことは、本当に申し訳なく思っています」

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