4月30日Ⅵθ(30)

私たちは個室を出て、架那ちゃんのもとへと戻った。

「架那ちゃん、一つ重大なことを聞いてもいい?」

「う、うん」

私は戻ってきてすぐ、真面目な顔でそう切り出した。

「三和さんたちのことは恨んでたりする?」

「まだ詩歌に何もしてないから、それほどでもないかな」

架那ちゃんは優しいなぁ。

私とはやっぱり違う。

「三和さんのこと信用できる…?」

「うん、ちゃんとした確証はないんだけど。

 信用しても大丈夫な人な気がする」

架那ちゃんは申し訳なさそうにはにかむ。

「架那ちゃんはこれからこの人たちと、お父さんの死の真相を探るみたいだけど、

 それに、全く関係のないも参加してもいい?」

「関係なくなんかないよ!詩歌は私の大事な友達なんだから!

 私一人じゃ何もできないってことを痛感したばっかりだし」

大事な友達、か。

架那ちゃんはそこで一回俯いた後重そうに口を開いた。

「でも、詩歌が嫌じゃないの?汀さん曰く、詩歌は嫌な思いさせられたんでしょ?

 そんな人たちと行動するってなっても大丈夫なの?」

「架那ちゃんが信用する人なら信用するしかないよ。

 その人を信用しなきゃ、架那ちゃんを信用してないってことになるしね」

「そっか。じゃあ私と一緒でもいいの?」

「うん」

どちらからともなく、二人で笑い合った。


「では、そういうことでいきましょうか」

三和さんが話を区切りにかかる。

「架那さんがループのキーであるということは、二人だけの秘密ですね」

小声で私にそう耳打ちしてくる三和さんは、年相応の無邪気な笑顔だった。

「私は貴方達のことを信頼したわけじゃないんだからね!

 架那ちゃんが信用するから信用してるだけだからね!」

「そう言うことでいいですよ。貴女が納得してくださるまでは」

私の皮肉も、軽く流されてしまう。

むぅ。苦手だ。

「ではこれからは、この三人がメインとなって動くわけですね。

 Dr.カンフル、オーロラ姫、それに乙女剣士ですか。

 なかなか豪華になりましたね。私汀の場違い感がすごいですね」

今までにこやかに黙っていた誘拐犯さん、もとい汀さんが私たちに言う。

「「なにその二つ名!詳しく説明求む!!」」

私と架那ちゃんが、同時にそう叫んだ。

乙女剣士とか超久しぶりに言われたよ。

はずかし。


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