4月30日Ⅴθ(15)

私の目論見通り、カメラは犯人たちの姿をしっかり捉えていた。

犯人たちは三人組で全員黒尽くめのスーツを纏っていて、バイク用のヘルメットを被っていてかおはわからない。

彼らは部屋の中へと侵入すると、一人が眠っている架那ちゃんをそっと持ち上げ、部屋の外へと連れ出す。

一人がたこ焼きの素が入った容器を別の全く同じ容器とすり替える。

もう一人が部屋の壁にかかった絵をいじって、絵の中からカメラを取り出す。

そしてそのまま静かに部屋を後にした。


くそっ。

一応カメラなどの類がないかを探すために家の中を隈なく見て回っていたのに、見落としがあったなんて…。

それに、おそらく私たちが風呂に入っている間に、たこやきの素が入った容器に睡眠薬でも混ぜておいて、証拠が残らないよう、睡眠薬の入っていない同じものを用意してそれと交換したのだろう。

今回はできる限り架那ちゃんから目を離さないようにしたのに。

失敗した…。


でも前向きに捉えれば、これでやつらの手の内はわかった。

架那ちゃんが一人ならば、そのまま誘拐。

私やおばあちゃんがいれば、周りを眠らせて誘拐。

なら、私が今日この家に来たのは正しい判断だったのではないだろうか。


ごめんね架那ちゃん。

私が不用心だったばかりにこんな目に遭わせちゃって。

今頃やつらに連れてかれてどこかで寂しい思いをしてるのかな。

次こそはしっかり助けるから。


私は、台所から包丁を持ってきて首に当てる。

やっぱりわかってても死ぬのは怖い。

自殺なんてはじめてだし。

でも、やらなきゃ架那ちゃんは救えない。

私は勢いよく包丁を横に振った。


-次こそは絶対に助け出してみせる。

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