4月15日(11)

「え、架那ちゃん?」

彼女はひどく狼狽して私を見つめる。

「なら一緒に逃げようよ!」

私は自然とそう言っていた。

まるで何度もこう言ったことがあるかのように。

「神坂さんには死んでほしくない!私の初めてできた友達なんだから!

 だから逃げようよ!」

見上げた神坂さんの目には涙が浮かんでいた。

「無理だよ。それにどこへ?」

「無理なんかじゃない!絶対何か助かる方法がある!だから-」

私がそう言い切る前に、キーという甲高い音が聞こえてきたかと思うと、

突然道路を走っていた車が横転して私たちのところへ突っ込んできた。

「危ない!」

なすすべもなくただ立っていた私を神坂さんは突き飛ばした。

私は必死に神坂さんに手を伸ばすも、ただ宙を切るだけだった。

今まで聞いたことのない衝撃音が私を襲った。

地面に倒れた私の視界に飛び込んできたのは、柵を超えて歩道に乗り上げ横転した車と、それを覆うかのような深紅の海だった。


私はそのまま意識を失った。

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