4月15日(12)

次に目を覚ましたのは、知らない天井だった。

左右を見渡してみると、小さな小部屋の中だということがわかった。

独特な消毒の匂いや、腕に刺さった点滴から、病室なのだと分かった。


今が何時なのか確認しようと左手を持ち上げると、左手に巻いた時計の文字盤に小さな血痕がついていた。

「ひっ」

小さくそう叫ぶと、私は改めて事故のことを思い出した。

もう一度一度ゆっくりと時計を見る。

「23;40分。あと20分しかない!」

私は神坂さんの言っていたことを思い出し、腕に刺さった点滴を引っこ抜き、布団からはね起きた。

悲しむのは後でだ。

私は夜の病院の廊下を霊安室に向けて走り出した。


廊下に出て、館内図を確認するとすぐに場所はわかった。

私は一心不乱に走っていく。

せめて今日のうちに彼女にもう一度会いたい。


霊安室にたどり着くと、私は恐る恐る扉を開けた。

部屋の中央には真っ白な布で包まれたベッドと、その上に横たわる一つの遺体があった。

「神坂詩歌様」

枕元に置かれた紙に書かれた文字列を読み上げる。

その瞬間、改めて彼女の死を実感した。

「あ゛ぁぁぁああぁぁあっ」

私は声にならない叫び声共に彼女の前で崩れ落ちた。

彼女の手を握ると、とても冷たかった。

私は泣いて泣いて泣き続けた。

身体中の水分全てを出し切るかのように。


瞬間、世界が蜃気楼のように揺らぎ始めた。

一瞬涙のせいかと思ったけれど、違った。

これが神坂さんの言っていたループなのだろうか。

「やだっ!まだ消えないで!」

私の思いも虚しく、私の体は雲散霧消する。

「ごめん、詩歌」

私の言葉は声にならずに虚空の中に消えていった。

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