4月15日(8)

私がそう尋ねると、彼女は少し俯いて何かをぼそっと呟いたように見えた。

しかしそれは一瞬のことで、すぐさま彼女は笑顔で私の方を見ていた。

「なんでそう思ったの?」

詰問されているかのようなどことない圧迫感を覚える。

やはり聞かない方が良かったのだろうか。

いやでも、ここまできたからにはやり通すしかない。

「その、私のドーナツの好みとか、家族のこととか、趣味のこととか。

 私が伝えてないことも、全部神坂さんは知ってる感じで。

 でもなんか、嫌な感じはしなくて。

 これがあるべき姿なんじゃないかって思ったりもするの。 

 まだあって数日しか経ってないはずなのに。 

 だから、その--」

「そっかぁ。やっぱり架那ちゃんには通しきれなかったか」

私が最後まで言い切る前に、神坂さんはそう笑って頰を掻いた。

そんな彼女の笑顔はどこか儚さを帯びていた。


「正解だよ。架那ちゃん」

神坂さんは手を後ろで組んでそう言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る