7月19日[月] ニャンニャンゼミ
本格的にセミが鳴き始めた。
朝、玄関前にもセミの抜け殻。ニャンニャンゼミの抜け殻だった。
ニャンニャンゼミは、そのチャーミングな名前と「にゃ~んにゃんにゃん」と鳴くかわいらしさから誤解されがちだが、世の少年にとっては(少年だけじゃないけど…)驚異的な存在だ。
ニャンニャンゼミの体長は40~50cm。その名の通り、猫と同じくらいのサイズである。体がデカいので鳴き声もデカい。クマゼミの約10倍ほど。
昔は、小学生までにニャンニャンゼミを独りで捕まえることは、男の子にとって、一種の通過儀礼だった。大人への階段の一歩目というか、一人前の男の一歩手前というか。
まあ、実際捕まえられなくてもイジメられるとかそういったことはなかったが(興味がないって子も当時からいたし)、独りで捕まえられた子はちょっとした英雄だった。男子の勲章的な感じだったな。
わたしは、小二で初めて挑んで泣かされて、小五の時にどうにか捕まえることができた。ひっかき傷だらけになったものだ。ニャンニャンゼミも必死でもがくわけだから、猫サイズの爪でガリガリやられるから痛いのよ……。
小学生たちがニャンニャンゼミを捕まえているシーンを最近見ないので、悪習として廃れたのかもしれぬ。時代を感じるね。と言うか、虫取り少年自体をあんまり見なくなったなぁ……。
夕方、アパートの隣の公園で、少年が二人、声を上げていた。兄弟らしい。
何事かと思ったら、二人でニャンニャンゼミと格闘していた。暴れる巨大セミを必死に抑えている。お母さんらしき人が、スマホで写真を撮っていた。二人とも傷だらけだったが、その顔は誇らしげだった。
こうして今も受け継がれているのだな。わたしは嬉しくなった。
少年たちによって空へと放たれたニャンニャンゼミは、アパートの上空を飛び去り、大量のおしっこをわたしの洗濯物にかけて(もうたたむだけとなった乾ききった洗濯物にかけて)茜色の空に消えていった。
少年たちの未来に幸あれ!今日のお風呂はしみるよ。
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