第2話 旅館で舟盛り食べた
その足で予約していた旅館に行く。その旅館につくとまず離れに通され、お茶とお茶菓子が出された。茶を飲み、お茶菓子を口に含む。お茶の苦みとお茶菓子の甘みで絶妙な美味しさだった。それから部屋に案内された。そこは茶室を部屋にしたのだろうか。棚にお茶の道具がたくさん並んでいた。荷物が部屋まで運ばれていた。女将さんが正座して
「ようこそいらっしゃいました」
それからいろいろと旅館の説明を受ける。ここも某アイドルアニメの聖地なのである。主人公の実家という設定なのである。だからどうしても泊まりたかったのである。女将さんは言う。
「お疲れのようで」
「はい」
「当旅館自慢のお風呂もございますので是非お入りになってくださいませ」
「はい」
「それではごゆっくりおくつろぎくださいませ」
と言って女将さんは出て行った。僕は掛け布団を取り出すとふかふかの布団にくるまり眠った。起きるともうご飯の時間だった。
ご飯を食べに食堂まで行く。料理は舟盛りやアワビのバター焼きなどてんこ盛りだった。舟盛りは舟の形をした大きな器に整えられたアジやタイ、イカ、サザエなどの刺身がたくさん乗っていた。同じ舟盛りにしても地域によって内容は少しずつ違うのかなあ、ってふっと思った。舟盛りなんて30歳超えて初めて食べるから少し緊張していた。お酒は飲めないが刺身を夢中になって食いまくった。脂がこれでもかっていうぐらい乗っていてなによりネタが本当に分厚かった。思わず
「おいしい」
とつぶやいてしまう。年甲斐もなく夢中になって飯を食らった。飯を食べたら少し汗をかいた。部屋に戻りバスタオルと手拭いそしてパンツ、浴衣を手に取ると風呂に入りに行く。風呂は内湯と外湯があった。内湯というのは建物の中にある風呂で外湯というのは建物の外にある風呂のことだ。身体を洗い、まずは内湯にて温まる。その後、露天風呂があったので風呂につかりながら少し眠った。
戻ってくると布団が敷いてあった。飯も作らないでいい、食器を洗わなくていい、風呂も焚かなくていい、となると少し落ち着かなかった。駄目人間になってしまいそうだった。その日は布団の中で小説を読みながら眠った。最高の贅沢だった。そして布団に入りながら今日起きた出来事を考えていた。頭の中にはカモメの話がぐわんぐわんと響きわたっていた。骨カモメは言う。
「好きに描いたらいいんだよ」
夜中になってのどが乾いて目が覚める。急須の中に入っているぬるいお茶を飲む。身体全体にお茶が染み渡る。急に絵が描きたくなる。部屋の電気をつけると鉛筆を片手に今日見た風景を感情のままに絵を書き起こす。何枚も何枚も書き起こす。そしていつしかまた骨カモメが目の前に現れる。
カモメ、カモメ
カモメ、カモメ
カモメガトンデイマス
カモメガトンデイマス
アア、カモメ
アア、カモメ
カモメノナツガヤッテキタ
カモメノナツガヤッテキタ
骨カモメが飛んでいる。放浪している。くちばしを鳴らしてケタケケタと笑っている。画板と筆を片手におにぎりを食べながらとことことこと歩いている。骨カモメはゴミ置き場にやってきた。そこではゴミ置き場にて黒カラスがカーカーカーと言いながら生ゴミをあさっていた。骨カモメは生ゴミをあさっているカラスをスケッチしている。骨カモメはふっと僕を見るとにやりと悪そうに笑った。
ケラケラケラ ケラケラケラ
アッハッハ アッハッハ
カモメヨ カモメ
生ゴミ クサイ クサイ
生ゴミ クサイ クサイ
ケラケラケラ ケラケラケラ
アッハッハ アッハッハ
カモメヨ カモメ
生ゴミ クサイ クサイ
生ゴミ クサイ クサイ
骨カモメは画板をそこに置いてくるくると踊り出す。ニタリ、ニタリと笑う。そして緑色の炎を口から、ぴゅー、と吹き上げる。緑色の炎は静かに燃え盛っている。炎はまるで磨き上げたガラスのように透明な光を放っていた。緑色の炎はそのまま天に伸びて上昇してはじけ飛んだ。
朝、太陽のまぶしい光で目を覚ます。やっぱり夢だったんだ。
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