第153話 輪郭しか見えない存在


「は?」


亀裂の中へと入り、景色を見ると皆と手がいる場所ではなく。色も何も分からない場所へと来ていた。


亀裂の中へと入れば皆の場所へと戻ると勝手に思っていたために戸惑う。


しかしすぐに辺りを警戒する。


『そんな警戒しなくても大丈夫だよ』


「誰だ!?」


急に声をかけられ、声の方へ身体を向けるとよく分からない存在がいた。そこにいる事は分かる、身体の輪郭しか見えない存在だ。


『誰でもないさ、ただ君とは面識があったよ』


あったよ?まるで今は無いみたいな……いや、待て前世にも居たのか?分からないな、記憶が完全にある訳では無いと理解している。むしろ覚えていない記憶の方が多いのではないかとも思っている。


『君の前世は戦国武将だ。斎藤道三、織田信長に仕えていた。信長の死後は特定の主を持たず、交友関係のあった者を助けていた。何故主を待たなくなったのか、それは君の家族が全員殺されたからだ。もう守るべき家族がいないのなら主に護って貰う必要は無いからね』


「っ!お前は何処でそれを知った」


今言われた事はは全て事実だ。道三殿に仕え、信長殿に仕えた。その2人の主が悪い訳では無いが家族は全員殺された、戦の最中に村ごと全て焼き払われた。妖と人間が組んでいたのだ、多少強いくらいの人間ではどうしようもない。


『面識があったって言ってるじゃないか、まぁ、簡単に神だとでも思っとけばいいんじゃない?あ、神なのに声がカッコよくも透き通っても無いなみたいな感想は無しね。いくらでも声だろうと身体だろうと変えれるけど今は変えたいと思ってないからね』


なんなんだ?こいつは。


「声なんてどうでもいいだろう、輪郭が光るやつなのにそんな事を気にするんだな」


『よし、なら良いか。それで君はこれからどうするの?あ、そういえばまた宜しくね。まぁ、いつか思い出すだろうから別に挨拶は要らないかも知れないけどね』


微妙にはぐらかされて話をそらされている気がする今はいいだろう。


「それでなんで出てきたんだ?」


『あぁ、それは感謝して欲しいね。本来あの亀裂に入ったら死ぬんだよね。それで君達全滅』


「はぁ?」


簡潔に言うな。要点しか分からないだろ、要点以外は誤差だとても思っているのだろうか。


『それと魂回収装置だったっけ?アレもっと強化しといた方が良いよ』


それは俺も思っていたが、何故今それを言うんだ?


『全員で生き残っていきたいなら死んだ瞬間に身体事箱に入って蘇生部屋でも世界でも何でもいいからとりあえず蘇生出来る場所に転移させた方が良いね。人がいなくても勝手に蘇生出来るようになってると尚良いと思うよ。そこまでいくと自動復活装置になるのかな?』


『とりあえず頑張って〜ばぁい』


「いや、待てよ」


と顔を上げた瞬間に景色が入れ替わる。


「ん?」


「「「神夜!?」」」


どうやら皆の場所に戻って来れたようだ。早速叩き潰そうとしている手を弾き返す。


「やっと帰って来れた、倒すぞ。皆」

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