第151話 皆を救う為に

あー!大変!疲れる!

今日からまた再開!

━━━━━━━━━━━━━━━


「目が開いたか」


呟きながら身体を起こす。


どうやら賭けに勝ったようだな。


辺りには水が無い、白い大地が広がっている。


どうやってここまで来たんだ?


そして


「武田は……居ないか…」


ダァン!


握り締めた拳を地面へと力任せに叩きつける。


「先に進む道を探すか」


歩き回る体力は回復した。


「なんだ……この一定間隔の黒点は。順路か?」


先へと続く道らしき場所を歩き出す。


そういえば結局どうなったんだ?モンスターが死んだらそのまま水に落ちて俺は死んでいるはずだ。そもそも死ぬ前にモンスターは水中に入れるはずだ。


そういえば、


「前にも不思議な事があったな」


確か、初ダンジョンで全員の意識が切れた時だったな。俺と誠が先に起きて辺りを見て回っていたら、誰かが近くまで来た痕跡が残っていた。でも誰も連れ去られても、殺されても、物を盗まれてもいなかった。


善意のある者達だろうと悪意のある者達だらうと、近付くはずだ。それなのに足跡はモンスター避け結界から中には入ってなかった。助けを呼びに行ったのならダンジョンから出た後に騒ぎになっているはずだ。


分からない。記憶が消えているのだろうな。前世の力か……。


「武田ー!居ないのかー!」


考えていた事を一旦放棄し、先を目指しつつ武田の捜索をする。


武田の魂保管庫は起動していない。つまり、死んでいない。


クソ、現在の状態が分かる機能を追加するべきだった。居場所も分かるようにもするべきだった。


「居ないのか!武田!もう水は無いぞ!」


何処に行ったんだ!


武田の魂保管庫はまだ発動していない!という事は生きている!


「クソ、現在の状態が分かるようにするべきだった」


現在地も分かれば尚良かっただろう。


「武田!武田ー!」


辺りは白い空間ばかり、当たり前だが人の影も形も存在していない。


何か手はないか……杞憂だったらいいが次元が違うのか?いや、別の空間に飛ばされたのかもしれないな。


せめて今と先程の空間が同じだと証明出来れば……あ!


「常世の残滓!」


狭い空間ならまだしも、巨大な空間での常世発動だ。いくら気を付けても残滓は残る。


立ち止まり、残滓が無いかを探っていく。


「有るな……、となると別の空間に飛ばされたの訳では無さそうだ」


常世の残滓がある場所は今の位置から真後ろにある。


ならあの巨大モンスターと戦っていた場所で俺は目覚めたのだろう。


「駄目だ、そうなるとこの空間に武田は居ない。先を急ぐしか無い」


足を早めながら順路らしきものに従う。


ここでグダグダしていたら、他の皆が死ぬかもしれない。


魂保管庫が発動していないなら何処かで生きていると信じるしか無い。


走っているとだんだんと白が強くなっていった。光っているのか?眩しくは無いが……。


そうして神夜は光の中に入っていく。


1人より皆を救う為に……


いや、武田を信じているからこそ


皆の方へ行くと決めたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る