第60話 彷徨う不死者

地下に入ってきて会話を数回した後の戦闘は現在数が多い敵が有利だった。


待て待て待て、数が多過ぎる。おわ!危な!ブレス!くっさ!糞投げてくんな!糞猿!大猿腕がクロスして突っ込んで来てる!?


「危ねぇなぁ!」


左手を突っ込んで来た大猿の肩に手を置き躱す、その時に右手に持っている刀の刃を大猿の首に当てる様にする。


すると大猿の首は開き、本来なら死ぬはず何故か体勢を整え神夜に再度攻撃を仕掛けようとしていた。


「チッ今ので殺りきれないのか、致命傷になるはずの攻撃だったんだけどな」


もしかすると召喚モンスターは通常生物とは違う生命の在り方になってんのかもな、例えば召喚者の魔力供給、自然からの魔力供給、一定時間は必ず世界に留まる。とかか?


一定時間必ずは少し違うかもしれない、さっき戦った女の猿は女倒したら消えてたしな。ちょうど時間がピッタリ倒すのと重なったとかは考えにくい。まぁ、召喚士が倒れたからモンスターは消えたって言う方が納得いくけどな。


そして召喚者の魔力供給だお召喚者全員魔力どんだけ有るんだよってなるからなー、いやコスパが凄く良いとか?分からないなー。


「くっさ!手汚!刀汚!」


どうやら糞塗れの状態で突っ込んで来たようだ。すぐさま手を振り、血振るいではなく糞振るいをする。


最悪だ、気持ちわり!さっさと倒さないとな!


糞等は一旦思考の外に追い出し戦闘等に集中する。まず最悪ぐらいの想定はしといた方がいいな、自然からの魔力供給、他生物から無理矢理の魔力供給、他は……一回召喚したら一定のダメージ与えるまで消えないとかか?首半分斬られてまだ一定のダメージに入ってないとかあるか?


「あっつ!火の玉?アンデッド系統のやつか!うわ!」


お前精神攻撃だけじゃないのか!なんでアンデッドが火使うんだよ!神聖じゃないからですって事か!?


足を取られた、なんだ?って足埋まってるー!?ん?こいつは!


彷徨う不死者バンデット!?」


地中にいるなら彷徨よって無いだろが!出てこい!斬ってやる!


戦いの最中に同じ場所にずっといる危険性は分かるだろ?


そして、隙が出来た神夜に一斉に襲いかかってくる魔法。火のブレス、火の玉、風の刃、水車。


咄嗟に自分の足に当たらないギリギリの所に刀を突き刺す、何かを刺した手応えがしたので足に力を入れて引き抜く


「おら!は!?」


刺した筈だが、全くもって効果は無かった。


迫り来る魔法を先に斬ってしまおうと、神夜は技を出す。


裂皇さっこう


上半身を仰け反り、円を書くように斬る。するとその剣筋になぞるように空間が裂け目が現れた。そこに魔法が当たると裂け目の辺りは無音となり裂け目が消えるのと一緒に魔法も消えていった。


魔法を消して一安心だが、敵はそんなに優しくはない。当たっていないのならとすぐに別の攻撃をしてくる。


ヒュッ!


「いって!弓か!左肩でまだ良かった」


神夜は両利きだが右が使えるなら右を使うと言うタイプの人間だ、そうだとしても片方の腕をあまり動かせなくなるのは辛い。


そこからが地獄だ、大猿に引かれ、ブレスを浴び、引っ掻かれ、精神すら撹乱させる。


「そろそろお終いにしないとね、モード近接殲滅」


そう言葉が囁かれた瞬間に動き出したのは二体の召喚生物、龍と大猿だ。大猿は後ろから走って来てラリアットをしてきた。その衝撃で下の彷徨う不死者の手ごと前に飛ばされる、そしてその前方から突進しているのは自らに炎を纏わせ突っ込んで来ている龍だった。ヤバいと思ったその瞬間に激突。そのまま数十m後ろに飛ばされてしまった。


「ぐは、はぁはぁ。流石に内蔵やらなんやらがダメージ受けてるな……クソ」


そして倒れている神夜に更に攻撃がくる。召喚生物ではなく、その生物を呼んだ召喚者達だ。


蹴られ、踏まれ、罵倒される。


やれ雑魚だとか、やれ死ねだとか。そしてあの三人の反応はとても面白かったや地下に来た奴らもあれだと何人か死んだよねなどだ。


そして耐えきれなかった神夜の意識が一瞬だけ落ちた。意思が落ちたせいか地上の常世が解除されてしまった。


神夜はまだ感覚を取り戻していなかったのか、常世を展開し続けると一時的だが徐々に能力が下がっていく事を忘れて居たようだ。


あれは神夜の全力では無かったのだ。戦闘はまだ終わっていない。


終わったと言う安堵はすぐに消え去ってしまうだろう。

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