第57話 防ぐのはもう不可能

槍使いの男より先に猿を出した女を倒す。重要なのはまず近付く事、じゃないと現時点では何も出来ない。


そして時間をかけずに倒す事。この二つを徹底して行こう。迎撃が入るとは今は考えない事にする。迎撃される前に倒すと言う前提で考えているからな。


さて、そう考えたならすぐに脳内でシュミレーションだ。まず最初にするのはすぐさま納刀する事、普通に上から下へ袈裟斬りでもいいが剣速は抜刀斬りには及ばない、早く敵を倒すなら抜刀斬りの方がいいだろう。


そしてそのあとは瞬歩と呼ばれている事をする、人によって瞬歩は全くもって変わってくるそのやり方は踏み込みだけの一歩で敵の目の前などに現れる方法と一歩ではなく細かく足を踏み込み目の前に現れる方法やそもそもテレポートのように目の前に現れる瞬歩もある。


神夜は明確にこれが瞬歩だとは言えない。流石に最後のテレポートの様な瞬歩はしない。というか出来ないが前者の二つなら状況で分けて使っている。


今回の場合は細かく足を踏み込む瞬歩だ、今回は先の猿同様に何かが召喚されたり槍使いが最初みたいにテレポートして来たりすると避けるとしたら一歩で行く瞬歩より細かく踏み込みをする方が避けやすいからだ。


なら女を倒すまでを考えたなら即行動するかと言われれば違う。一回で成功しなければ警戒され二度目が出来なくなってしまう。なので一つだけ検証しなければならないのが槍使いの男がテレポートをする能力を持っているのかいないのかだ。


検証するついでに女を倒せたらなとはならない、失敗しねも倒せるが、時間がかかるのでそれだけは避けたい。それにまだ敵が来ると言う懸念もあるのだから尚更時間はかけていられない。


ならば、最悪倒さなくてもいいのだ。先に進めればいい、追ってきても転移した後に壊せば転移は出来ないだろうし転移がなかったら通路を一部斬って通れないようにすればいい。すぐに行動に移す。


よし、まず先に進めるであろうで通路に行ってみる。その最中に敵の2人の内どちらがテレポート能力を持っているかを確認する。


敵が追って来なかっら通路に入り退路を壊し、来れない様にする。


テレポートして来た場合はすぐに女へと瞬歩で近付き抜刀斬りをする。テレポートしてきた直後に瞬歩すれば何処に行ったか分からなくなり女の近くに男がテレポートしてくる事はないだろう。


よし、とりあえずこれで行動に移してみよう。



瞬歩までは行かないがそれより二回りは遅い速さで踏み込みをして入った転移してきた通路とは違う通路に向かう。


ズ、たぁぁん。


「なっ!?逃げる気かよ!待て!」


「逃げるのは卑怯!」


逃げてないだろ、寧ろ更に奥に行こうとしてるわ。そこでチラッと二人を見ると男が慌てて走ってきている、女は口が動いてる為詠唱をしているのだろう。


つまり、これで男がテレポートを使えると言う訳では無いと分かった。なら今が最大のチャンスだ、今瞬歩で女に向かって抜刀すればほぼ確実に当たる。男がテレポートしたとしても出るのはさっきまで俺が居た所だ、そこから俺を見失って探している時にはもう女を倒している。女が対応するにも猿は男の肩に乗っているし詠唱がテレポートだったら防ぐのは無理だろう。もし召喚の魔法で何かを召喚しても男と同じくそこには俺が居ないために俺を防ぐ為の召喚は出来ない。


いい作戦だったな、男がテレポートしてくるな。よし、今だ。


ガッと股関節を上手く使い急に方向を変え、そしてそこからの瞬歩。


「馬鹿が!逃がすかよ!…あれ?」


猿も引っ掻こうとしていたが空をきった為にウッキー?と鳴いている。


「な!何処に!」


そう叫んだ瞬間に目の前にはもう抜刀術の構えをしながら少し浮いている神夜が居た、防ぐのもう不可能。


そうして神夜の口から告げられる技の名前、それは前世でよく使っていた技だ。


瞬蜃しゅんしん


ズザーーーー、ブン!すさーーーーぁ。ドサ。


最高速に乗って抜刀斬りをする為に最後の踏み込みを強くし宙に浮くようにした。宙を浮けば摩擦は関係ない、その為空気抵抗以外では速度が落ちない。空気抵抗を余り受けたくないので女から2m離れた所で踏み込んだ。


斬った後は地面に着くため摩擦が生じる、故に神夜は抜刀術で斬った後に地面に脚が付き靴が地面を削っていく、地面を削りながらも人を斬った後の血振りをしたのは前世を覚えているからだろう。今はしなくてもいい血振りをした後にゆっくりと納刀する。そのあとの音とは女が倒れた音だろう。


「な!お前よくもニマを!クソが!」


「おいおい?お前らがまいた種だロ?」


その目を見た男は一瞬気圧されたがすぐに神夜へと向かってきた。猿はもういない、女を倒した時に消えたのだろう。


こいつも倒シてしまおう。そう思いながら男が間合いに入るのを待っていた。

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