第35話 前世の夢 続

さて、そろそろ帰らないとな。主君の元へ。


「もう行くの?」


そう言われてもしょうがないと思う。何せ数年ぶりに帰ってきたのにその2日後にはもう出発をしようとしているのだから。


しかし、それもしょうがないと言えるだろう。主力が抜けた状態の組織はとても怖いだろう?社長では無いにしても社長より1個2個下の階級の社員が会社から遠く離れた家に帰ったら嫌だろう?しかもその人は会社サーバーを完璧に守っていて人柄も良くその会社の人以外にも凄い人として有名だったら?自分達でサーバー攻撃等を防ぐ事が出来るか?不安だろう、久しぶりに家族にあって来てくだいと願ってもその間守れるか不安だろう?だからなるべく早く帰るしか無いのだ。


「ははは、ごめんな。また帰ってくるから」


楽しかっただろう、数年ぶりに家族全員でご飯を食べて話をし、遊び、楽しかっただろう。しかし帰るしか無いのだ、現代のように電車や車があったならもっといても良かっただろう。しかし今は戦国時代とも呼ばれる時代なのだ、妖も人も闊歩する時代なのだ。


「俺は斎藤道三様に仕える武将だ、帰らない訳には行かない」


斎藤道三に仕えている武将の1人、俺は楪神羅ゆずりはかぐらなのだから。家族を1人1人抱きしめてから一言行ってきます。と言って走って帰る。馬に乗ればいいのにと言われるがどうせ寄り道しないといけない、しかもその寄り道してる時に馬は恐怖に駆られて逃げ出すのだから結局馬に殆ど乗れない。それに鍛錬にもなる。


これからはどうなるのだろう、使えている斎藤道三が天下人となるのだろうか、戦は何度あるのだろう、妖はいつ居なくなるのだろうと考えに浸りながら道を急ぐいつも着ている甲冑は置いてきた。着ているのは動き易い軽装の装備、装備している刀は愛刀の暝冥天武めいめいてんぶだけだ。


「チッ、妖が居るなこの山。斬っていくか」


その山は信濃、現在で言うと長野県に位置する山は妖の溜まり場になってしまったのだろう。常闇が展開されている事からそれなりの妖怪がいるのだろう。


神羅は刀を抜き常闇に脚を踏み入れる、咲き乱れる彼岸の花その中は白黒の景色である。常人は耐えれないずそのまま命が尽きるであろう領域、神羅は何故か入れる。入れてしまうのだ、そして戦闘をする事が出来る体力は少し回復が遅くなると言う点以外は何も問題が無い。


半妖と呼ばれる者が居ることは知ってはいるが見た事は無い、後に会うこととなるが今はその話は良いだろう。


「この常闇の主は何処だよ……。山の中だから見にくいんだよ。ッ!猿鬼!」


ここは山、木の上からも敵は来るだろう。距離を取って武器を構える神羅、構えは中段、右脚と右腕を引き刀の刃を上に向け人間だったら心臓があるであろう所の下辺りを目指し溜めを作り一気に解放して瞬歩の如き速さで先手となる覇突を打つ。刀は薄く光電気を帯びている。


「餓鬼も居るのか、何処にでも居るな。このままでいいか」


油断大敵とは言った物だ。


「百目鬼!?お前が主か!危な!」


決して間合いを間違えてはいけない。後ろが無いのがあの妖だ。近ずけば殴られる、そして厄介な事に目から光線らしきものが撃たれる。落命は許されない。


「焦らずにやるしかないか」


攻撃を避けながら下段から上段への斬り上げ、上段から中段へと横Vを描くような攻撃。百目鬼だけが敵では無いそれを斬り捨てながら戦うこと5分。勝敗は神羅の勝ちと言う事で終わった。


「さて、もう少しだな。急ぐか」


今日も神羅は妖だけを相手する、人じゃないのは幸いなのかこうも妖がいるのが不幸なのか。それが戦国時代と言うものなのだろうか。だが戦となれば人も斬る。それは突然の事だ。

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