お祝い

待ち合わせのギルド前に着いてもまだ皆来てなかったから先に依頼の報告に行く事にした。


「えっ、嘘…。」


元から失敗すると思ってたもんね。証明書見て驚き顔の女ギルド員にしたり顔なハティル。さすがにあんな所に黒猫クーちゃんがいればFランクでは依頼達成出来ないだろうし、諦める事にもなるよ。他にも色々関わってたし、ランク付けはしててもやってみないとランクとは違う依頼も多そう。そういうのはやっぱゲームではなく現実なのだと思える。ばたばたと奥へと消えて行くや、少しして出てきた。薬草も置いて確りと報酬金、五百キリル…?


「少し多いような。」

「先ほど依頼主からの感謝の連絡と、追加報酬を頂きました。」


ソフィアナさん、なんて好い人!次会ったらお礼伝えなきゃね。


「依頼、達成おめでとうございます。」


依頼終えたってのにこんな子供が出来る事が有り得ないのか納得がいかない疑いの目で頭を下げるギルド員に、ギルドの受付嬢としてどうなのかとも思う。私が退くなり次の冒険者の対応を見るや愕然、体格の良いマッチョ体型冒険者には営業スマイルでしてるし!何この格差、めっちゃムカつくんですけど!!


「私あの受付嬢嫌い。」

《主を見下す無能者ですね。ギルドとして冒険者の実力も把握出来ない者を雇うギルド員もどうかと思います。》


私よりも殺りたいと怒るハティルのお陰で苛立ちもましになってしまった。


《殺さない代わりに大きな挫折を味わえばよい。》


ハティルさん、凄く悪い顔になってますよ。いっひっひと笑う悪人顔です。


「聖なる獣、だよね。」

《そうですよ。だからこそ我の言葉は真になるのです。》


凄いでしょと言いたげなハティルだけど、やってる事がねこれじゃね。こんな事に使うんじゃないと思いながら、死なないならいいかと何も言わず撫でる私だった。


「餓鬼発見!」


その声に満面の笑みで振り向き抱いているハティルを下ろしてあげましたとも。


「ヒッ!?」


逃げ惑うロデーに追うハティルは凄く楽しそう。本気を出せば一瞬だしハティルもハティルで遊んでいるってのは分かるけど、ロデーに関しては噛まれた恐怖からか物凄い勢いで逃げてるよ。場所を気にせずに死に物狂いで逃げてるから、すみませんと謝る宝狼だった。


「学習能力無い。」

「やられたいから発言だよね。ドM確定!」


ルフィと私の会話に遠くから「ちげぇーしぃぃ!!」と聞こえて来る辺り凄い地獄耳だよね。まぁ無視したけどね。


「ロデは置いておいて行きましょうか。」


どこにと首を傾げる私に、着いてくれば分かると言うライフさん。ルフィもいい所だと言うし大丈夫かな。


「ハティル、終わったら来てね。」

《了解しました!!》


クレイブが扉を開けてくれる優しさとか、仲間で見習える所があるのにも関わらず何も得ないロデーは駄目だね。ありがとございますと言って通る私に優しげな笑みなクレイブさんはなんと紳士的なのでしょう!まぁ、ロデーが急にこうなったら怖いね。操られてるって絶体思う。百%誓える。


そうしてライフさん達に連れられて来た場所は、近付くにつれて賑やかさがある来たい場所ベスト三の一つ、酒場です!内装なんて想像通りの木造だよ!カウンターにテーブル、結婚式開けそうな程の広さだし並べられてるお酒の数が半端なく多い。十八歳で見た目十歳の私じゃまだ飲めない代物だよ。


「後二年、でも無理そう。」


二十歳なんです、と言っても誰も信じてくれない未来しか見えない。それに成長遅いらしいし、大人に見られるのは何年後になるやら、とほほほ…だよ。


「ここの酒もそうだけど飯もめっちゃ旨いぞ!」

「酒はまだ私とライフしか飲めませんからね。」


ふふふ、ロデーもまだ青二才じゃん。年齢聞いてみたらクレイブさんが二四歳でライフさんがニニ歳、ロデーが一八歳でルフィが一七歳だって。ルフィは一個下なのに驚きつつ、私と一緒の年齢な訳だしロデーは餓鬼扱いしていいんだとニヤリ顔の私。酒場に入るなり「いらっしゃい!」と酒場で野太い声が響き渡る。


「ライフちゃんいらっしゃい!」

「今日もごちそうになります!」


恰幅のある正に酒場の女将的な風貌をしている。


「あんた達と似合わない可愛い嬢ちゃんもいるね?」

「初めまして、セシリィといいます。」


この見た目だしもう嬢ちゃんって言われても良いやと諦める私だれど、子供振るつもりはない。大人間近が子供振るのはさすがに痛い子でしょ!それにばれたら恥ずい!十八歳なのでそれらしく挨拶した。賢いねと頭撫でられると恥ずかしすぎる。


《戻ってきました!》


そのハティルの声と共に要らぬ声も聞こえる。


「恥ずかしがってら。」

「煩い。てかロデーの方が恥ずいでしょ。」


そんな姿に笑ってやった。だって子狼姿のハティルに引き摺られながらの登場だよ!笑わずにいられないでしょ!女将さんも驚き顔で、ライフさんとか腹抱えて笑ってるし、クレイブさんやルフィは笑えばいいのに肩震わせて我慢してるよ。


「こいつに何されても遊ばれるしもう諦めた!」


引き摺られながら腕組む姿は本当に面白い格好だよ。


「まだ戦った事は無かったから知らなかったけど、銀狼シルバーウルフってこんなに強いんだな。」


銀狼シルバーウルフでは無いんだけどその言葉が気になったから聞いてみた。成獣ならばRらんく:Sで幼獣だとAぐらいだって。名前からして弱そうと思ってたけど上位で驚いた。


「俺達はまだシルバーだからB級までの依頼しか出来ないんだ。もうそろそろ条件も達成するしゴールドの昇給試験受けようかと思ってたんだけど。」

「これではまだまだゴールドにはなれないと思いましたよ。」

「もっと実力を身に付けないとゴールドになれば死ぬかもしれないな。」


それに頷くクレイブさん。これは幼獣と思われてAだと思われてるハティルのせいですね。本当にすみません。Aじゃないよ、多分ランク外だと思う。創獣だし未知の魔物、聖獣になった訳だしもし付けるならば、SSSかな?ランク外ってある?


「ハティル、私達昇級の邪魔しちゃったよ。」

《まぁ、我の種族を間違えてる時点でまだまだと言うことですね。でもゴールドにはなれると思いますよ。》


ロデーを離して私の側に戻って来たハティルも、ちゃっかり宝狼の事を認めてる。


「宝狼ならゴールド大丈夫だよ。きっと、いや絶体!ハティルもそう言ってるし!」


だからハティルは論外で考えて欲しいです!本当の事は言えないかわりに、それだけは伝えた。

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