お祝いII

女将にハティルもいいのか聞いてみると大人しくしてくれるならばいいみたいで席に着いた私達。酒場=ご飯だよね!異世界ご飯、串焼きは食べちゃったけどお腹一杯食べたいな。薄味ではなくて、量も少なくなくて、本物の料理!テレビや雑誌で見るだけじゃない、美味の料理!


「顔ヤバイぞ。」


いいもん!嬉し過ぎてにやけ顔になってるのは分かってるし!


「今日はセシリィの冒険者デビュー祝いだ!気にせずにじゃんじゃん食べろー!!」


ライフさんの言葉に宝狼メンバーはメニュー表を開きどれを食べたいか聞いてくる。祝われた事の無い私にとって、これ程嬉しい事はない。驚き笑った私にさあさあと促される。


「俺は何時ものでイテッ!」

「お祝いなんですからセシリィさんから先ですよ!」


珍しくクレイブさんがロデーを叩いた。舌打ちするが、これに関しては何も反論が無い事に納得はしてるのかな。


「俺達も冒険者になった時に祝ってくれた人がいてさ、それが嬉しくって俺も見習ったまでだ。嬉しいだろ?」


やってやったと言いたげに笑うライフさんに、大きく頷いた私は感謝の言葉に「ありがとう!」と、ちょっと泣きそうになったけどロデーに馬鹿にされそうな気がして止まった。


《祝い!?我も何か主に…》

「ハティルはいいの。私と同じで祝われてる側なんだから。」


そうぶつぶつと呟き先を越されたとかなんとか言ってるよ。


「ハティルも一杯あげるね!」

「食い過ぎるなよ。」

《…こやつの有り金全て出させてやろうか。》


うんうんそれ良いかも。ハティルやってやれ!


「ハティルの食費はロデーが払ってくれるみたい!」

「ロデ、ありがと。」

「おぉ、そうかありがとな!」

「ロデ、感謝します!」


ロデーは三人の笑みにこれはもう払わざる終えない状況へとなった事で「最悪だ」と俯いた。ハティルはメニューを釘付けになってて料理名ってよりも値段を見ていた。どれだけ食べるかは私にも分からないけど、どんまいとほくそ笑む。


メニュー表を見ればよく知ってる料理名ばかりだ。オムライスやビーフシチューなど、パスタ類まであるから食べてみたい物だらけで迷っちゃう。でもやっぱり一番最初に食べてみたいと思うのは


馬牛バーギュウのステーキが食べたい。」


馬牛ってのにちょっと想像は出来ないけどステーキ食べてみたかったんだよね。脂の乗った肉でナイフとフォークで切って食べる、簡単そうな調理に見えて食べた事のない料理!ステーキなんてお店でしか食べない料理だし、テレビでも雑誌でもめちゃくちゃ美味しそうで一度でもいいから食べたかった。前世は食べれなかったけど、今世で始めに食べれるとは何と僥倖な事か!


「一番高い奴頼んだし。」

《我もこれで、一皿では足りないので三皿注文したいです!》

「ハティルも同じの三皿大盛でって!」

「はぁ!?嘘だろ!」


ハティル見るけど涎が垂れながら文句なさげに頷く姿にがっくしと項垂れるロデーだった。


「ステーキは美味しいぞ!俺からもおすすめだ!」

「ロデ、どんまい。」

「それ言うなら少しは払えよ。」

「ロデはケチで倹約家なのでお金は十分に持ってるはずです。」


クレイブさん曰く宝狼の中で一番あるはずだって、ロデーが口止めしてる時点であるなこれは。ロデーらしい。ライフさんはステーキでクレイブさんはビーフシチュー、ルフィがオムライスでロデーはサンドイッチだった。サンドイッチって女子だよと思いながらも「お金が…」と落ち込む姿から何も言わずにあげた。ハティルの奢ってくれるんだもん、感謝だよね。


「お待ちどおさん!ステーキだよ!」


そうどどんと合計五皿のステーキの迫力は凄い!香ばしい匂いが漂い熱い鉄板で焼かれてる音、肉の厚さもあり凄く美味しそう!頂きますとフォークで刺せば肉汁が溢れ出て一口サイズに切って食べた。


「あつ、あうあう!!」


鉄板に乗った状態で熱々なのを食べた事もなかったからすっかり忘れてた。口の中が凄い熱くて涙が溢れ出してきた。


「あうあうあうって何だよそれ!」


笑われようが今はどうでもいい。ライフさんに水を渡されて一気に飲み干した。ヒリヒリと感じる舌に目に涙を浮かべながらも、楽しくて仕方がない。次からは失敗しないように息を吹き掛けて食べた。ハティルを見れば冷ます事なく直接食べている。


「熱くないの?」

《それほど熱くありませんよ?熱の耐性はありますから。》


氷属性でもあるハティルにとって火属性の熱は弱点のようなものなんだけど、弱点無くない?弱点無しで神速で攻撃当てれない時点で倒せる奴なんていないでしょ。ハティル最強じゃない?私はどうなんだろうか?強いのかな?ハティルの足を引っ張るのだけは嫌だな。


「ハティル、私頑張るね。」

《何を頑張るのか分かりませんが、主の傍には我が居ますから。》


ハティルは本当に格好いい。そう思いながら私は始めてのステーキを完食した。ガーリックみたいな香ばしい匂いが食欲をそそり、食べると口の中に肉汁が広がり、ほろりと崩れる身が肉汁と合わさり美味しかった。始めてのステーキに感動しながらご馳走さまでしたと手を合わせた。


「ハティル、宿屋の確保忘れてた。」


もうそろそろ終わりを迎え帰る雰囲気に思い出した私。宿屋を見付けるのが冒険者として一番最初にやる事だよね。


《野宿でも我は構いませんが、主は我の上で寝ますか?》


ハティルの上で寝れるなんて気持ちいいだろうと想像出来る。それも良いかなと思った矢先。


「それに関しては大丈夫ですよ。私達と同じ宿屋に一つ空きがあったのでそこお願いしてます…ッ!?」


足元から唸る音がしたが、気にせずなんと好い人なんだとクレイブさん達に奢ってもらった事といい感謝を述べて、私は不機嫌なハティルを抱いて宿屋へと向かった。

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