逃亡

結界魔法プロディエンスペム:魔法無効結界ディスキャリス絶音結界ノームスペーム:解除 キャスト


屋根上で、目の前に浮かび上がる魔法陣を指で弾くと粉々の光となって消える。ゲームと魔法の使用は同じで良かった。


《主、これで良かったのですか?》


そう私に問うハティル。


「うん、いいの。この世界では命のやり取りで躊躇なんてすれば命取りだし、小さい頃から死には関わってきたから。」


そう、病院で多くの人の死を見てきた。吐血する者や骨張って逝く者。小さい子でも年寄りも。流石に人骨や人肉は見た事無くて、グロテスクな光景なのに平気だった。仲良い子が死んでも泣かなかったし私って、元から冷淡なのかもしれない。楽しそうにはしゃぐ子狐が母狐の背に乗っり姿に微笑ましくて、外に出れて感傷に浸る魔物達を見て、魔物だって涙を流している。


《何であんな簡単に殺した!》

《気絶させずジワジワとやろうって言ってただろ!》

《だからジワジワ殺してるだろ。まだ腹の中で生きているぞ。我の胃液は毒。痛みと苦しみで一日かけて死ぬがな。》

《う…なら、良い。》

《 正直もう少し苦しませてやりたかった。》


言い争う声も有りながら生存していた全ての魔物は屋根上にいる。十匹だけどね。死んだ魔物はそのままにしてる。もう当主はいないけど、全ての証拠が消えてあいつの罪が消えてしまうのは嫌だったし、誰か見付けて明らかになった方がいい。まぁ、近々分かるかな。


「下に降りないでね。人間にバレたらお終いだから。」

《その時は一噛みで》

「私の前で殺し宣言する?」


にっこり笑顔に怯える魔狼 ワーウルフ


「町ではやめてね。冒険者となら全然殺し合って良いけど市民なら、ね。」


冒険者は魔物と戦うのが当たり前だから。ちらっと私の横を見る魔物達。ハティルが私の言葉に頷いていたからだ。私ってよりもハティルに逆らいたくないみたい。


「ハティルもありがとう。」

《我の背は主だけの物ですからね!誰にも乗せません!》


凄く嫌がっていたけど、魔物の子達を乗せてくれた。


「ご褒美考えよう。」


なんて言えばめっちゃ嬉しそうに尻尾を振りだしたハティルのせいで、辺りの木々が強風に煽られ撓りだし、魔物達が飛ばされそうになっていた。


「ハティル!」

《申し訳ございません!》


うん、しょうがないか。嬉しくなったら尻尾が動いてしまうもんね。こんな所で言った私の落度。木々によって隠れてるけど、警備も全くいないから心配はしてない。全て番犬任せね。ハティルのお陰で番犬も役立たず。さっすがハティルだよ。


《主、早くしないと待ち合わせに間に合いません。》


ハティルの言葉に、空を見上げると茜色に染まりかけていた。夕の鐘がいつ鳴るのか来たばっかの私には分からない為急がないと。


《この魔物達では壁越えは無理だと思います。我が往復して行くという手もありますが、少なからず数分で終わらせましょう。》


やる気満ちてるハティルには申し訳無いが


「それに関しては大丈夫!一回いった場所になるけど、転移使えるし。」


て言っても転移できるのはフォルムの森とこの冒険者の町ルシスだけなんだけど。冒険者と言えば旅だし転移はそんなに使わずでやるかな。危険な時に使えばいいかな。それ以外はのんびりとやっていこう。時間は沢山あるんだし。


「フォルムの森だけどいい?」


魔物達が住みかはばらばらではあったが、フォルムの森は岩場もあれば川もある、大丈夫だろう。


《自由になれるならどこでも良いぞ。》

《人間がいない所!》


魔物達が人間に捕まるのは懲り懲りだと、そうは言っても冒険者はどんな場所にも行く者達だから会わない場所と断言出来る程の場所ではない。どうしようかと悩む私に、一本呆れ気味に出るハティル。


《冒険者がいる以上人間に会わぬ場所などない。主が助けたとはいえ此からも主にずっと頼る腑抜けはおるまい。弱肉強食こそが我が世界であり、自由は己で掴み取れ。》


その言葉はフェンリルの風格もあり、誰もが逆らえない程に気圧されている魔物達。威厳を漂わせる中で、苛立っているハティルにただただ頼もしく感じる私は、そっと背中を撫でた。


《人間のいない自由な場など馬鹿げた事を。己の命は己で守るものであり、捕まったのは平和に現を抜かした貴様自身だろう。救った主に感謝の言葉も無ければここよりは安全だという森まで送ると言ってこの対応か。》


さすがハティル、格好いいと思った私だったけれど、まだまだ列挙しそうなハティルにもう良いやと指を宙で一回転させた。


空間魔法スペイムスペム:転移ピンテイン


ハティルの言う通り、この町よりも魔物にとってはまだ安全な森に送ってあげるんだし魔物達の意見なんて全部聞けない。ハティルの言葉に縮こまる魔物達と共に足元に浮かび出した魔法陣と共に私はフォルムの森へと転移した。


突然の転移に口が止まるハティルに、魔物達は一斉に私に確りと感謝の言葉を述べて逃げるように走り去った。



《今からあいつら全て殺しに行こうか。》

「助けた甲斐無くなるからやめてね。」



感謝の思いが伝わらないと、それはきっとハティルを恐れてだと思う。


「でもハティルありがと。」


私ってやっぱ幸せ者だなと思えたこの瞬間。


【職業 : 創獣使いヴァリマーLvが1→2にupしました。これより創獣進化可能です。】


嘘、えっやりたい。滅茶苦茶やりたいのにも関わらず。


《主!待ち合わせに遅れます!!》

「うぅ~…分かった。」


皆とも会いたいけど約束を破る人にはなりたくない。少し遅れるのも人として駄目でしょ。何時誰が死ぬかなんて誰もわからないから繋がりを大切にしたいなんて、死に近い私だから思っていた事だけれど泣かない私は最低だよね。死んでるのに泣いてる家族を見て羨ましいとか、幸せ者だなと思っちゃったし。



「夜やろう夜。ハティルも見たいよね?」

《?主が行く所なら我も行きますよ。》



私も幸せ者の一人になれたからいいもんと思いながら、転移使って冒険者の町ルシスへと戻った。


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