冒険者ギルド
「あれ何!?」
串に刺された焼き鳥なのか、真っ白な肉。美味しそうな匂いに走っちゃう。
「これはチロ鳥の串焼きだ。ジューシーで美味しいから食べてってくれよ!」
涎が出そうな程に美味しそうだと目を輝かせて見てたせいか、店主が一本私に渡してくれる。
「お金‥」
「可愛い嬢ちゃんに特別だ!」
「特別扱いは駄目ですよ。他の客はズルいって思われます!」
「‥‥そうか?なら仕方無いか。」
美味しそうな匂いに食欲をそそられるのを我慢して離れようとしたら、後ろから肩に手を乗せ。
「大丈夫。」
その言葉に顔を上げるとルフィが店主にお金を払った。後ろから続々と来る宝狼メンバー達。
「お前、走んな!迷っても知らねぇぞ。」
ガシッと頭をロデーに掴まれ睨む私。
《迷っても我にかかればこやつらの場所など一瞬で分かるわ!》
狼だけあって鼻は良いもんね!
「ありがとう!」
ルフィにお礼を告げて店主から串一本貰う。
「俺も食べようかな!」
「なら私も食べたいですね。」
「なら俺も食べるぞ!」
「ロデは自分で買って。」
「はぁ!?何で俺だけ?」
そう言いながらもルフィは笑って一本一二〇キリルを四本買ってロデーにも買ってあげる所が、優しくて格好良いね。
「ロデーはケチ臭そう。」
「うっせぇ。金大切にして何が悪い。」
「だから格好良くないんだよ。ルフィは格好良いもんね。」
そうチロ鳥を一口入れると、口の中でホロリと崩れトロッと溢れる脂に「ん~」と声が漏れる。
「店主、これ凄く美味しいです!」
「だろ!うんうん、又食べに来てくれよ。嬢ちゃんなら割引してやるからな。」
にっこにこな私の顔にふやけた顔の店主は頭を撫でてくれた。チラチラ串を見るハティルに可愛くて一口あげる私。
「うわぁ~、ギンさんって可愛い子に甘過ぎじゃねぇ?顔ヤバいし。」
「ロデ、お前は倍な。」
「はぁ!?それ酷くねぇ!?てか本当の事言っただけだし。」
出店を叩くロデーの肩に手を置くライフは
「ロデは口に出し過ぎなんだよ。心の中に止めて置けばこんな事にはなってない。」
「お~ライフ、お前も思ってたって事か?」
黒い笑みの店主ギンさんにライフさんはあっと口を閉じ目線を反らす。
「お前も倍にしようか?」
「すみませんでした!」
頭を下げるライフさんに、笑う私達。
「知り合いなの?」
「ギンさん、元冒険者。色々教えて貰ったから、頭が上がらない。」
ルフィに教わり納得して又一口食べる。だから体格が良いのか。筋肉もヤバいね。ロデーは分かるけどからかわれてるライフさんはちょっと珍しい。最後の一口はハティルにあげた。
「ギンさん、次はお金持って又食べに来ます!」
そう手を振ると手を振り返してくれるギンさんの姿にロデーが笑う。ギンさん、強面だから似合わないのは分かるけど、めっちゃロデーを睨んでた。ギンさん好い人そうだしロデー次会ったら多分半殺しされるかもね。知らない方がいいよね。教えないでおこう。
「何笑ってんだ?」
「何でもない。」
「気持ち悪。」
ギンさん、もう殺す手前でいいかも。
寄り道は又出来るしとルフィに連れられて来た場所に今、私興奮してます!異世界に来たなら必ず来たい場所ベスト三に入る場所。まだ中に入ってないけど見た感じで分かる!冒険者の出入りで察するし、看板に書かれた異世界語が何故か読めちゃう。
「冒険者ギルドだ!!!」
他よりも一段と大きな冒険者ギルドは、両開きの木製扉。さっさと入って行くロデーに心の準備をさせて欲しいと思う。心躍らせ扉を押して中に入った。
目の前には冒険者が屯する広々とした場。奥にはカウンターがあり依頼はそこで受けて、カウンターの左隣に階段で手前には待場か机や椅子が置かれ、ここで色々と依頼の話するのかな?
右は依頼番があり、ランクで別れている。
「お前冒険者なるんだろ?」
「なる!!」
ロデーの言葉に直ぐに返答した。無視?しないよ!だって今凄くわくわくしてるしと態度の違う私にやっぱ餓鬼だと笑って言った事は今は無視してあげよう。
「冒険者になるならあそこに行けばなれる。俺達ちょっと行く所あるから終わったら待っとけよ。」
そうライフに指差された場所は、カウンターの一番左、一人も並んでいない場所。
「了解、ありがとう!」
早口で言って一目散に向かう。夢の第一歩だ。
《主よ主よ!!苦しい!》
「あっごめん。」
力を緩め、垂れた耳に撫でる私。興奮し過ぎちゃった、気を付けます。
「冒険者に成りに来ました!」
カウンターに背伸びをして顔を出す。一声、振り向くギルド員さんに歩いて来る女性と目が合うなり良い笑顔を向けて来た。うん、営業スマイルだね。一張羅タイプの黒と青カラー、膝上の可愛い制服。
「冒険者カード発行すれば今日から貴女は冒険者になりますが、それで宜しいですか?」
「はい!」
迷いなく頷く私に、女性は間を空けて溜め息を吐く。
「冒険者はそんな簡単なものではありません。夢や憧れ何かで入って直ぐに死ぬ者もいるんです。そんな嬉しそうな顔して甘く見てる様では死にますが、本当に宜しいのですか?」
凄い辛辣なお言葉で、うん、今すっごく嬉しいし楽しみにもしてる。甘く見てるって言われればそうかもしれない。
「夢や憧れは駄目ですか?人って頑張れるけど、夢の為に頑張れる人もいると思います。叶えられないままに死ぬよりも、叶って死にたくないですか?それに次死ぬ時は、ハティルもいてくれると思うのでそれで良いです。でもまだ死にたくないので死にそになったら依頼失敗しても生き残ります。」
ハティルも私を見て頷いてくれる。叶えず何も出来ない辛さを一番知ってるからこそ私は今が楽しい。ハティルを目を向けて女性は分かりましたと奥へと去って行った。
《主よ、我は主と共に生涯いるつもりだが主は死なない。我等がいる限りずっとだ。それだけは忘れ無いでください。》
「うん、忘れない。」
もう一人じゃないからね、頼もしい仲間がいるのです。嬉しくって撫でました。
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