入国審査
「ライフ達か、依頼もう終わったのか?」
「うん、まあな。」
ちょっと歯切れが悪いが仕方無いよね。私が倒しちゃったし、それを回収したようなもんだし。私が良いって言ったからなんだけど、思う事はあるみたい。次からは気を付けよう。
「お前達も大分ましになったな。初心の時が懐かしいな。」
「ボロボロで帰って来てたな。」
「うっせぇ。もう昔と違うし。」
「ロデーも口は変わらず頼もしくなって良かった良かった。」
宝狼のメンバーと話す門兵のおっちゃん二人。背を叩かれてちょっと嫌そうなロデーだけど気にしない。今までの悪口、気を利かせる訳も無いでしょ?
「この可愛い嬢ちゃんは?」
そう門兵さんがやっと私に気付いてくれた。
「依頼中に色々合ってな。それで入国させたいんだけど何も覚えて無くて身分証も何もかも持ってないみたいで。」
ライフの言葉に門兵二人に不憫な目で見られる私。あぁ、罪悪感が‥‥。そっと胸元を握り締めた。
「こんな可愛いのによく無事だったな。」
「俺も娘がいるから分かるぞ。よく助かった!」
そう頭を撫でられるんだけど、私十八なんだよね。ルフィと手繋いでたけど十八なんだよね。あんまり羞恥心も無いんだけどね。
「よし、何も無いと思うけど身分証無い者は審査する決まりがあるから嬢ちゃん、良いか?」
「大丈夫です。」
ハティルを抱き締めて頷いた。入国審査、どんと来い!
そうして連れられて来たのは尋問室。ライトやカツ丼は無いけど占い師が持ってそうな水晶球が置いてあった。
「嬢ちゃん質問するぞ。嬢ちゃんの名前は覚えてるか?」
「セシリィです!」
「年は?」
「十八です。」
「‥‥‥んんん?十八?」
「十八ですよ。」
そっと門兵二人が水晶球を見るが何も起こらなくて驚く始末。
「壊れてる?嬢ちゃんちょっと嘘付いてみて。」
門兵さんの言う通り十歳です、なんて言ってみたら水晶球が真っ赤に染まった。そう言う事か、これ嘘発見器だ!凄いな、これ地球より便利なんじゃないかな!
「正常‥なのか?まぁ、続けるか。」
もう一人の門兵さんは紙に今までの事を書いてるのかな?その人も驚いてたね。この見た目で十八なんて驚いて当たり前だよ。
「ここに来た理由は覚えてるか?」
「気がついたら森の中にいて、ライフさんが安全な場所まで連れてってくれるって言ってくれたので来ました。」
それから出生地とか聞かれたけど、あの森かな?と曖昧に答えてみて水晶球は反応しなかったから正解みたい。この世界の私の親は知らないからそのまま答えたりと正直に答えた私。門兵さん曰く強い思い込みは水晶にも騙せるみたいだとか言ってたっけ。だから操られた人とかは水晶球を騙せるみたい。操られてる場合はすぐ分かるから私の場合は思い込みが強いのだろうと言われちゃった。ちょっと変な子扱いとか嫌なんだけど、正直に言わないと駄目なんでしょ?正直に言ってこれって酷くない?泣くよ?泣いちゃうよ?いいかな?
《主、我は主が十八だと知ってますから。》
うん、ハティルだけだよ信じてくれるのは。尻尾をぶんぶん振って本当に可愛い。
《主のお言葉を信じぬとは、殺しましょう。》
「いや、駄目。」
可愛いけど危ないや。座っていたハティルを抱き上げて膝の上に置いたら、ちょっと嬉しそうに膝の上に丸まった。大人しくなって一安心。
「その子狼‥‥嬢ちゃんのか?」
「私の従魔‥仲間です。」
「嬢ちゃん
「そんな感じですね。」
前まではそうだったんだけど、進化しちゃったからねちょっと違うの。これだけは正直に言えないよね、何か言ったらもっと変な子扱いされそうだし、多分この職業は私以外いなさそうじゃない。
そんな話に門兵さん二人は、ハティルを見て何の種族が話し合ってる。
「ウルフか?」
「いや、ウルフの子狼はこんな毛色では無かったはず。」
「じゃぁ、
「もしかしたらその変異種かもしれませんね。」
「珍しい魔物を
宝狼の皆と同じ結果だね。フェンリルなんて皆信じないもんね。
《我を
機嫌悪そうに唸るハティルに背中を撫でて落ち着かせる。フェンリルなんて知られたら逆に大慌てだよ。知られない方が良いんだよ。
「じゃあ最後にセシリィちゃん、犯罪に手を染めて無いよな?」
「してません!」
はっきりと門兵さんの目を見て返答する。私の十歳の嘘以外は水晶球は何の変化も無い。それを見て頷き門兵さんは笑って審査終了と告げた。
「セシリィちゃん、入国許可する。身分証無しには入国費が必要なんだが、それは宝狼のリーダーから貰ってるから今回は大丈夫だ。後でお礼言っとけよ。又ここから出た場合身分証が必要だから、その時までに確り貰っておくように。」
「ありがとうございました!」
お礼を言って私は門兵さんに連れられて門へと連れられてた。入国費ライフさんが払ってくれたのか。町にも連れてくれて感謝しきれないね。どうしようか?まずはお礼して、何かしないと。
「ハティル、何かいいお礼って無いかな?」
《お礼ですか?ん~、我の毛とかはどうでしょうか?柔らかいですが、燃えませんし防御面でもいいですよ?》
「‥‥いいけど、抜いても痛くない?」
《それぐらい痛くも痒くもありません。》
フェンリルの毛なんて凄い良い。多分知らないだろうけど防具とか武器とかの強化したら凄いの作れそうだよ。
「セシリィ。」
名を呼ばれて見てみれば、待ってくれてる宝狼の皆。一名を置いて優しい皆。
「おっせぇ。まさか詐欺ッぎゃっ!!」
言う前に足踏んでやった。やられると分かってて言う時点でこいつドMかな。うん、そうだね。
「ロデー以外、皆待っててくれてありがとう。」
「いえいえ。」
「まだ連れて行きたい場所があるから、行こうか。」
「どこ行くんですか?」
「内緒。」
舌打ちするロデー、歩き出すライフ達と一緒にどこに行くのか分からない場所に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます