説明Ⅱ

なんだろうか、その駄目そうな雰囲気は。


「私、無理?」

「違うよ、そうじゃ無いんだけどね。」

「お前餓鬼じゃん。」


うん、言ったな、又言ったな。ジド目でロデを睨んでやったら気付いたのかそっぽを向いた。


「ロデの言いたい事はそうじゃ無いんです。まだセシリィさんは小さいから危ないと言ってるんです。」

「ハティルいるよ?多分、皆より強い!」


腕の中でこんな奴等なら瞬殺ですなんて言ってるしドヤ顔だよ。ハティルさえ入れば冒険者出来ると思うんだけど?


「それは、そうかも知れませんが子供が冒険者をやる事が心配なのです。」

「てか戦ってもないのにこの犬の方が強いって、うわぁ!?」


そうロデーの言葉に鼻元に皺を寄せてハティルの一吠えに怯むあたり、お尻を噛まれそうになった恐怖がまだ残ってるみたい。


「ロデー、強がらなくていいよ。」

「強がってないし!」


そう言いながらお尻を擦ってる姿に笑う四人だった。


「冒険者なるには年齢って決まってるの?」


それが一番重要だよね?冒険者になる為の判断基準。


「いや、冒険者になるのに年齢は気にしない。子供でも金を稼がないと生きていけない人もいるし、最初のランクならほぼ薬草採取か家事の手伝いぐらいだからな。」

「魔物を討伐するにあたって試験があるんです。その試験に合格出来れば低級魔物の討伐依頼を受ける事も出来ますし、ランクも一つ上がります。子供達はそこで戦闘訓練を受けて合格を目指すんですよ。」


ならば私は余裕だね。ランク一瞬で上がるんじゃないかな?


「そう言っても次からは昇級試験は条件付きだからそう簡単に上がれると思うなよ!」


にやにやしながら私を見るロデーに、考えを読まれたみたいでムカついた。ハティルにお尻噛み付かせようか。


「セシリィなら一瞬。楽勝、だよ。」

「ルフィ、ありがとう。」


ロデー、ルフィの優しさを見習え、本当に。


「でもやっぱ子供に冒険者やらせるのって何か嫌なんだよ。子供だから守ってやりたいんだよ、俺は。」

「合格して低級だけで飽きたらず、中級に挑み大怪我する子供もいますからね。中級は又ランク上げないといけないんですよ。」

「馬鹿だよな。自分の実力把握しろよ。」


それロデーが言えるセリフでは無いね。


「ほんと、ハティルの方が強いんだから自分の実力把握してね。」


可愛い笑顔でロデーに言ってあげると、三人が吹き笑い俺は強いと言い張るロデーだった。


「セシリィ、もうそろそろ着く。」


森を抜け視界が広がりルフィの指差す方を見ると、町を高々とした壁が囲う様に聳え立ち、門の両端に門兵が立っていた。凄いね、日本にない異世界に来たって感じがひしひしと感じられる。


「セシリィ、身分証持ってない、よね?」


身分証?鞄無いし無いよと頷く。


「すっかり忘れてた!身分証無かったら審査あるんだっけ?」

「セシリィなら大丈夫ですよ。」

「子供だし悪事なんてしてないだろけど確認はされるだろ。」

「逆にその見た目で犯罪者だったら誰でも騙せるぞ!お前詐欺師向いてんじゃね!」


プッと笑うロデーの思いっきり足を踏んでやった。痛そうに足を抱えるロデーを見て先歩いてやる。絶対一生口治らないね。てかいつか絶対痛い目見るね。合わなかったら私がハティルにお尻噛み付き許可出す!いつかギャフンと見るね、こういうタイプは!


「ロデ、やめた方がいい。多分、ロデ、セシリィ一生勝てない。」


ルフィは分かってるね。腕の中でね、ハティルヤバイよ。


『主、もうこいつ噛みましょう。主を馬鹿にされて我は我慢したのです。主、もう良い?』


上目遣いで可愛い顔でそんな顔されたらうん、って言いそうになった、うん本当になった。


「‥‥ハティルが噛んだら死んじゃうから駄目。」


垂れる耳に小さく鳴くハティルにありがとうと伝えて頭を撫でてあげた。ブラシがあったら買ってブラッシングしよう。ハティル喜んでくれるよね。


「身分証ってどうやって作るの?」


そうそう必要だよね?入国時とか私の世界でも必要だったし。


「冒険者になるのなら大丈夫ですよ。ギルドカードが発行されるのでそれが身分証になりますから。」


それは良かったと、教えてくれたクレイブにありがとうと伝えた。ようやく着く町。門だけでも弾むのに、町なんか見たらもっと興奮するんだろうな。


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