説明

「次ね、何で君がここにいるのかな?」

 

中年が腰を下ろして目線を同じにしてくれる。子供の私が一人こんな所にいたら危険だからか、危険視しているのかどっちかかな?

 

「分からない。」

「分からない?」

「気が付いたらここにいたから。」


私の言葉に息を詰まらせる四人。顔を合わせ視線で会話している。冒険者なら口だけではなく、目でも出来るって絆がある証拠だよね。


「お母さんやお父さんは覚えてますか?」

「知らない。」

「一人でここにいたのか?」

「ハティルがいてくれた。」


お陰で怖くなかったと頭を撫でるとハティルは目を細めすり寄る。可愛いハティルを、引き気味に見る盗賊男。そんなに怖かったのかな?凄く頼りになる可愛い子なのに。


「そう、か。」


そう同情の目で見詰められる私。そんなに可哀想でも無いんだけど。


「餓鬼なんて言って済まなかった。」

「町まで一緒に行きましょうね。」

「大丈夫だ、俺達がついてるからな。」


うん、めっちゃ心配されてる。魔法使いさんはどうなんだろうと見てみると、そっと近寄り頭を撫でてくれる。うん、同じだね。本当の事言ってるんだけど、騙してる様な罪悪感もある。


「町までそう遠くねえから心配するな。」


言葉遣い改めるのでは無かったのかな?もう忘れた?早いけど、又下に見られたらやるだけだしいいかな。


「すみません、宜しくお願いします。」


その親切心に有り難く甘えようと頭を下げた私に、驚く四人。


「ロデ、この子を見習って下さいね。」

「うっせぇ。」


笑う三人に、拗ねる盗賊男。私には一生直る気がしないけどね。


「俺はライフ。宝狼ってクランのリーダーをしてる。」

「私、クレイブです。宜しくお願いします。」

「俺はロデーだ。」

「僕、ルフタス。」


中年、恰幅の良い男に盗賊男、魔法使いさんの順で顔を見て覚える。


「えっと、ライフさんとクレイブさん、ロデーにルフタスさん?」

「何で俺だけ呼び捨て?」


うん、だってさん付けたく無かったんだもん。


「合ってる、それでいい。」

「いやルフィ待って、良くないから!」


ルフィ?ルフタスの愛称かな?


「てかルフィより俺の方が年上だから、何でルフィはさん付けな訳?」

「会って直ぐの態度だろ。」

「嫌なら口直して下さいね。」

「そう思う。」


皆理解してくれてる。頷く皆にロデーだけが拗ねているけど変えるつもりはない。餓鬼扱いされたんだし当たり前でしょ?


「さんいらない、ルフィでいい。名前は?」


自己紹介して無かった事に顔を上げると、しゃがんで見えるルフィの顔は日本人顔で黒髪の碧眼美少年。癖毛の無いストレートの髪で目が大きく肌白くて童顔。


「綺麗!」


なんて言った私に、目を見開くルフィ。何でそんなに驚くのだろう?


「黒、だよ?」

「うん、綺麗!ルフィの黒髪好きだよ!」


日本はほぼ黒髪だし、黒髪に馴染みがあるの。他の三人は茶髪もあるけど赤や緑なんて見た事無いもん。銀髪も好きだけど昔馴染みの黒も好きなの。何故か瞬きを繰り返すルフィに、すっかり自己紹介を忘れていた事を思い出し。


「私は、セシリィです。」


あれかな、男の人に綺麗とかって駄目なのかな?美人とか綺麗とかって女性は嬉しいけど男は嬉しく無いって聞いた事あるし。


「あの、格好いいの方が良かったよね?」


申し訳無さそうに言った私に首を振ったルフィ。


「ありがとうセシリィ。」


そうお礼を言ったルフィは、とても嬉しそうに笑う姿は本当に美人さんだ。格好良いよりも綺麗なんだよね。多分、もっと大人になれば格好良くなりそう。どうしてお礼言われるか分からないけど


「どういたしまして。」


受け取っておこうかな。凄く嬉しそうだし。行こうとはぐれない様にルフィと手を繋き町まで向かった私は、そこでこの世界の事を教えてもらった。


東西南北と中央に大陸があり、今私がいる所が北大陸のオルテシア王国の王都オルティアを囲うようにあるフォルムの森なんだけど、今向かってるのは王都よりも南東にある冒険者の町ルシスの方で、そっちの方が近いらしくフォルムの森って広大なんだって。


北大陸は三国ありオルテシアは東に、北はアルマ国で西がバラスター帝国らしい。


「冒険者の町はな、商都って呼ばれて商業も発展してんの。冒険者も多い町な訳で冒険の道具や回復薬等々、冒険者って上がれば上がるほど金回り良いからな。」

「ロデ、それは冒険者になれば金持ちになれるって言ってるものですよ!私達は自分で決めた依頼を責任持って必ず果たさなければなりません!」

「でも真実じゃん。」


クレイブさんは冒険者に誇りがあるのかな。金持ちになれるからなったってよりは、冒険者に憧れてなったような感じかな?ロデーはやっぱお金だよね。


「要するに冒険者は自由でもあるけど、決めた依頼は必ず果たす為の努力は惜しまず、命懸けだ。上がればお金は確かに良くはなるけど、出費も簡単な依頼とは違って多くなる。でも高ランカーはほぼ金持ちだと思ってくれていいかな。専属契約して儲けてるし、高ランカーになるのが俺達の夢だ。」


何か格好いい。でも要するに


「金持ちになるのが夢なんだね!」

「あっ、まぁそうなるか。」


高ランカー、何か格好いい!!分かるよ、強い人とか格好いいって思っちゃうよね。憧れたり夢を抱いたり、私も高ランクになる為に必死でやったもん。その分なったらなったで頼られ期待され面倒臭くなってキレたね。それで本当に親しい人としか依頼受けなくなったっけ。でも高ランカーか。


「私も冒険者になる!」


この世界に来たならやっぱり冒険者になりたいよね!そう目を輝かせる私に、ぎょっと驚く四人だった。




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