創獣⒈

そのボタンを押した瞬間現れた透明な板。十の名が縦に並んでいる。一つ一つ私が名付けた名で一匹一匹思い入れがある。何匹もテイム出来る訳もなくレベルが上がる事に一匹テイム出来る様になる。職業レベルは最高十だからこそ十匹だ。


創獣ってもしかして同じ?


【職業Lv.1 創獣可能数0/1匹】


やっぱ同じだった。と言っても決まっている。順番通り並んでるし順番通りしようと思ってる。それが一番良い。


白魔狼ホワイトウルフハティル


狼の魔物で一番好きだったのが白魔狼ホワイトウルフだった。とても珍しい魔物だったから一週間ぐらい探してようやく見付けたのがこの子。


【ハティルを創獣進化させますか?】


透明な板が現れ二つのボタンが現れる。躊躇無く【YES】のボタンを押した。


【ハティルを創獣進化させます。創獣進化は主の思いのままに。】


その表示と共に私自身が光輝く。目の前に現れるのは結晶体。透き通った綺麗な結晶の中に白い狼が丸まって眠っていた。ハティルだ。一番長くいた子。フェンリルがいなくて次に見付けた子。この世界でずっと一緒にいたいけど、いても良いのかな?立入禁止とかそういうのあるのかな?ずっと一緒にいれて一緒に戦えて、守って守られて、そんな存在がいいな。


結晶体が光輝き粉々に割れる様な音と共に光が広がり出した。


あるじ!主!》


何か振る音と顔に着いたべたっとした湿った感じ。嘗められてる。


目を開ければ大きな黒い鼻に口、牙や舌と、大きい。振る音は尻尾が振ってる音だった。全長十五m程の狼だ。


天神狼セルヌフェンリル。フェンリルの上位種へと進化しました。】


青と白の綺麗な狼だ。足やお腹辺りが白く、上に向かって青く変わっていく毛色は、触ると最高級布団の様なふわふわ感に最高だ。最高級布団なんて触った事無いけど。


【ハティルの創獣としての能力は、装飾化(襟巻き化)。装飾時、主の能力向上効果有り。神速+防御力up。ハティルの能力使用可能。】


フェンリルに進化したのはちょっとそう願ってたから期待していた。もうめっちゃ格好いいよハティル!それに一緒にいたいって願いが装飾化とかヤバくない?神速とか防御力上がるみたい。速度upとかではなくって神速だよ!?ハティルの能力使えるみたいだし、装飾化良いね!!


「ハティル、凄くなったね!」

《主のお陰です!》


ブンブンと振る尻尾の風が凄い。犬と同じ様に嬉しいのだけど‥


「ハティル、ちょっと大人しくしよっか。」


落ち込む様にすみませんと耳が垂れるハティルだった。


ゲームではない、目の前にいるハティル。ゲームの中ではずっと一緒だったけど、どんな性格でどんな声で鳴くのかなんて分からない。魔獣の狼の声は全て一緒の声優さんだったけど進化したからか全く違ってた。


「ハティルって人懐っこかったんだね。今までもそんな感じだったの?」

《いえ、今までは余り何も感じませでした。ただ今までの事を記憶として残っていて、急に自我が目覚めた様な感覚で凄く嬉しく思います!》


耳を立たせてゆらゆら揺らす尻尾が可愛い。イメージ的には無口な孤高のイメージだったけど、犬っぽい。犬でも全然良い!


「ハティル大きくなったね。」

《進化しましたから!主は少し低くなりましたか?》


首を傾げて聞いたその言葉に、驚き地面を見た。確かに地面が近いような気がする。自分の手も足も小さくなってる。気付かなかったのはいつも横になってベッドと地面が近いから、自分の身長なんて気にしてなかったからだと思う。と言っても身長は低い方だった。一五二センチが、大体一三十センチぐらいかな?小さいね、絶対子供と間違えられる。


「何でだろ?」

《主の種族が関係してるのでは無いですか?》

「種族って神人?」


神人って種族が珍しくって他のゲームにも無いし、容姿も人間らしかったから選んだ。神人はエルフ同様に魔力が膨大が取り柄とされてたはず。それ以外に何かあったっけ?


《神人はエルフ以上の長命種です。寿命が無いとまで言われ、成長が最も遅いとされてます。十八ですが神人ならばそれぐらいが妥当なのではないでしょうか?》


‥‥えっ、嘘?十八でこれなら二十でも子供?


《エルフで成人としてみなされるのは百とされてますが、神人の場合はそれ以上五百とされてます。》


えーーー!!!無理でしょ?百でまだ子供?人間全員子供!


《と言っても現在この世界に神人は絶滅したとされてるので、生きてるのは主だけですよ!》


‥‥ハティル、そこ胸を張って言う事ではないと思う。うん、これから私の未来が不安でしかないよ。

絶滅したなんて私希少価値あるよね?奴隷とかってこの世界にあった場合狙われるの確実だし。


《主は唯一無二ですから、たった一人だけの存在ですね!主以外の神人なんて我は認めません!》


うん嬉しいよ、凄く私への愛を感じるね。キリッとした感じ、威風漂うけどもまさかこんな事で感じるとはね。


「ありがとうね、ハティル。」


頭を近付けて撫でて欲しそうなハティルの表情に、負けて甘やかしてしまう私。気を付けないといけないと、これからどうしようか考えないとね。

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