第24話 洋一②

 第2話目です。

 旅行に出たのにぜんぜん先に進んでません……あれ? オカシイナ??

 連休中の都県境エリアはめちゃくちゃ混むしね。

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 自宅から都県境を越えて大体三〇キロ程度進んだところで『一時間経過』を見積もっていたんだけどとんでもなかったわ。

 やっぱお盆休みに入ったせいか世の中みんな出かけているようで、国道も都道も県道も市道もわけわかんない細道でさえぎっちり車で埋まっていた。


 要するにぜんぜん進んでいないってこと。


「(案外と都心の方がガラガラだたりするのかねぇ~)」


「うわぁ~ あれなんですかぁ⁉ ピカピカな館ですね!」

「よっし! すまほで撮って読み上げっと! イ~エッス! ぐるぐる!!」


『ピコン! 「ご休憩、にせんきゅうひゃく、はちじゅうえん、から」 デス! 現在地カラ「♂×♀ホテル」ガ検索サレマシタ。ホームページヲ開キマスカ?』


「HP? 見てみよっか⁉ じゃあ、ぐ……「うおおおおお、待て待て!」」

「どしたの? 洋一」


「そろそろ休憩時間だ。どっかで飲み物でも買って一休みするぞ!」

「「は~い」」


 あいつらがおかしな休憩処に気づかなくってよかった。気づいたら絶対あそこで休憩するって効かなくなるもんな、ぜってー!

 なんてその時の俺は安心していたんだけど、後から知ったことだが彼女らはラブホのことは既にわかっていて俺のことを揶揄っての行動だったようだ。そして、そう遠くない日に………。


 一時間に一度は疲れている疲れていないにかかわらず絶対に休憩することにしていたので自宅からさほど離れていない、たぶん平時なら三〇分もかからないで到着するような場所のコンビニで第一回目の休憩となっちまった。


 自分でも気づかないような疲労で事故でも起こしてしまったら、二人に怪我をさせてしまうかもしれないし、何より楽しい旅行が台無しになってしまいそうで慎重になってる。

 気を使いそうだからあいつらには言わないけどな。それに二人にちゅーとハグだけしてもらえば俺は回復して元気百倍っしょ? 二人は満足、俺も元気でwin-winだよ! ん⁈ 正常運転性常運転。


「えっと、おまえらなんか飲むか?」

「わたしコーラがいい!」

「わたくしはミルクティーがいいです」


「ん。コーラにミルクティーな。んじゃ、ちょっと待ってろ、買ってくるわ」

 二人は車に待たせ、俺だけコンビニの店内に入る。二人を連れて行くとあれこれ見て回り始めてコンビニごときでも数十分出てこれなくなるんだよな……楽しいのはわかるんだけどな。


 コーラとミルクティーに俺用のジャスミンティーを抱えてレジ待ち。連休の街道沿い店舗だからかレジだけで五人待ちとか……おっと俺の順番だ。


「お支払いは?」

「ぱ、paipaiで……」


「はいどうぞ……」

 スマホの画面を機械にかざす。


 『パイパイ♪』 

「ありがとうございました」


 便利でいいんだけど、このネーミング何とかならんのかね……公衆の面前でなぜにアラサーのおっさんがパイパイ言わにゃならんのよ。レジ担当が男の子じゃなかったら事案発生よ?


 すぐに買って戻ってくる予定だったが、そこそこ手間がかかってしまった。

「悪いな、ちょっと遅れ……た、って何やってんだ?」


 駐車場でエレンとナイマは、某大所帯のダンスパフォーマンスグループの音楽を爆音でかけているボボボボ煩い車に乗った変な男どもに絡まれていた。


「ああ‼ 洋一様っ、この人たちがしつこいんです! なんか一緒に遊びに行こうなんて頭悪そうなことずっと言ってくるんです!」


「そうなのか?」

 俺は頭悪そうと評価された男に聞いてみる。


「あ゛あ゛ん? おっさんが何クチ聞いちゃってんだよぉ⁈ この女は俺っちとた・の・し・く・お・あ・そ・びなんだからジャマすんじゃねえぞ? おら!」


 頭悪い評価のそいつは俺のことを突飛ばそうと腕を伸ばすが、俺にそれが届くすんでの所で止まる。止められる。

 エレンが横からそいつの腕を捕まえたからな。エレンはそいつの腕を振り離すとそのまま俺に振り向き、俺の唇をむさぼりだす。


「じゅるじゅるじゅる……ちゅぱぁ」


 いや、エレンの意図することはわかんだけどコンビニの駐車場ですることじゃないよね? あっ次はナイマもね? はいはい。わかったよ。


「ちゅるっじゅる…ちゅ~れろん…・・・じゅるじゅるじゅるちゅ~はうん、じゅるじゅるじゅる」


 えっと……長くね?


 突然の奇行に呆然とするボボボボ男たち。だが一瞬ののち。姿かたちさえ消える。


 まあ、本当に消えたわけじゃなくてエレンがコンビニの裏にある藪に殴り、殴り、放り込んだだけなんだけどね。それが早すぎて見えなかっただけ。当然だけど殺してなどいないよ?

 ナイマは空間を歪め監視カメラでさえ欺き証拠隠滅。ついでに煩い車もどこか空遠くにすっ飛ばしていた。


 魔力充填から厄介ごと処理まで仕事が速いな!


「ナイマ、うるさい車あんなものどこに飛ばしたんだ?」

「とうきょうわんにしずめてやったぜ? ですよ」


「……うん。それ不法投棄だから次からはやっちゃだめだかんな?」

「はーい♪ りょーかいでーす♡」


 二人にコーラとミルクティーを渡して再出発。今度はエレンが助手席の番だ。


「洋一、大丈夫だった? 洋一のこと馬鹿にしたからわたし許せなくって……」

「わたくしも……」


「ん? いいって。それより二人こそ彼奴等になんかされなかったか?」

「んふ、心配してくれるの? ありがとう、洋一」

「洋一様。ありがとうございます」


 助手席と後部座席から抱きつかれるが渋滞中で車は動いていないので無問題。走行中はやめてね? 気もそぞろになっちゃうから? ね?




 都県境を越えて三〇分もすると周りの景色もだいぶ様変わりし、低いビルと住宅街の間から木々と山が見えるようになってくる。


「もう少し先に行ってしまうと本当に山ン中入っちゃうからここら辺で早いけど昼飯にしちゃおうか?」


 当初の目論見では今いる場所付近が最初の休憩地点だったんだよな。普段は仕事でしか車を運転しねえからこんなに混むもんだとは思ってなかったよ。

 ここから先は田舎道だからちっとも動かないほどの渋滞はないだろう。四時間の予定が五時間になっても二人にギュッと抱きついてもらうだけで疲労が消えるのだからほんと便利だよな。


「なんか食いたいもんあるか?」

 二人に聞くがニヤニヤするだけで何も答えない。どした?


「ふふふっ! じゃ~ん! おべんとう!」

「え?」

 ナイマが後部座席から重箱を見せびらかす。


「ま、ま、まさ、か……ナイマは作ってないよな?」

「……………洋一様、ナイマは悲しいです」


「しょうがないだろ? おまえが料理すると怪物モンスターが生まれてくるんだから!」

「大丈夫だよ、洋一! おべんとうを作ったのはわたしで、ナイマは弁当箱? 重箱におかずを詰めてくれただけだよ!」


 それでもなにか霞状のゴーストが生まれたらしいのでナイマさんたら侮れない。とうぜん別の意味でな。


「んじゃ、せっかくだからベンチのある公園かレジャーシートを広げられる場所のあるところに行こう」


 スマホで調べるとほど近い場所に川を中心にした広い公園があったのでそこに向かう。


 けっこう川遊びの家族連れなどが多かったけど、川辺から離れた木陰には人もまばらでちょうど具合の良い広さで芝生が広がっていた。


「うわぁ~ 気持ちいいね!」

「そうだな。うちの近所にはこんなに広くて自然いっぱいな公園はないからな」

「私が拾ってもらった公園より快適そうです」


 確かにあそこもそこそこ広い児童公園だけどな。悲しい思い出はいらないですよ?


「え~ 悲しくはないでしょう? そこにいたからナイマは洋一に出会えたんだから奇跡の公園だよ⁉」

「モノは言い様だよな……。お、あそこでいいか?」


 張り出した木の枝が芝生に大きな影を作っている場所がある。あそこにレジャーシートを敷けば即席レストランだ。


 レジャーシートは俺のではなく課長のお宅のものだったりする。レジャーシートが車に乗っていたのは車をお借りたときから知っていたので、そのまま拝借しています。助かります。変なシミはつけませんので大丈夫です。ご安心を?


 さぁ、めしめし!



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結局ぜんぜん進んでねぇ~

公園といえばムーミン谷の公園には一度は行ってみたい。テーマパークのほうじゃなくてね。テーマパークは昔の面影を知っているので微妙な気持ちになりそう……


ではまた。★忘れないでね!

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