第23話 洋一①
少し時間いただきました。ぎっくり腰はまだ治ってません……とほほ。
今回は洋一なんですけど、長くなってしまい全7話でございます。
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『アツはナツイね』
部長がなんか言ったあとフロアの気温がぐっと下がって涼しいったらありゃしねえ……
今年も猛暑日だか酷暑日だが知らんけどとにかくクッソ暑いわな……
無自覚に冷気を吐く部長は便利かもしれんが、常日頃からそばにいられるとそれはそれで暑苦しいので、そこは良し悪しだな。
まっ。
そんなこんなで、お盆休暇の奇行……じゃなかった、紀行の話、な。
今回は俺が主役だってことだけどよ、石ころその①とかセリフのない樹木役じゃねえよね? ねぇ?
おい! 目を逸らすなよっ⁉
*†*:..。..。..:*†*:..。..。..:*†*:..。..。..:*†*
「洋一、暑いよ……」
「わたくしも暑いです、洋一さまぁ~」
季節はもう夏。
八月に入ったばかりだが、連日連夜の猛暑にあの鬱陶しかった梅雨でさえ懐かしむ気持ちが湧いてくる今日このごろ。ふぅ……
「じゃあ、回数を減らそうか? それとも暫くはぜんぶ止めようか?」
熱く滾ってるんだもんな? どこがっていちいち聞くんじゃねえよ! わかんだろ?
もちろん今二人に言ったことはただの軽口だけど、それにしても『暫く』とか期間限定でしか止めないつもりの発言にいつものことながら俺自身も大概だなとは思う、思うだけなんだけどな。
そんなことをぼやっと、暑いからな、考えていると二人が抗議の声を上げる。
「洋一様は何を言っているのですか⁉ わたくしはイヤです。減らすなら暑いのぐらい我慢しますよ! あ! そうだ!」
ナイマの瞳に赤光が宿る。え?
「そうそう! 洋一! もうっ、止めるなんていっちゃ嫌なんだからねっ!」
エレンは最近アニメで覚えたツンデレ女子っぽく言っているつもりなんだろが、エレンは常にデレデレだろうが⁉
「冗談だよって、おい、やめろっ! ナイマっ、冷却魔法に魔力を全振りしたら俺たち凍死しちまうぞ⁉」
本当のところいうと二人とのえっちは凄く気持ちいい。これは二人が異世界人だからなのか単に俺との相性がいいのかよく分からん。
ただ、それを二人に素直に伝えるのは負けた気がするのでぜってー言わねえ。それにもしそんなこと言ったら夜から朝まで連日連夜それこそ枯れるまで……おお恐ろしい‼
ところで最近
ま、超絶美女の二人に好かれてハーレムになっているからただ単に浮かれてんだと思ってるんだけどよ。だって、所詮は俺だもん。だって二六年も彼女いなかったし……ちっ、嫌なこと思い出したぜ。
「洋一……」
「洋一様……」
「ん? いいぞ。そろそろ寝ようか」
余計なことに思考を巡らせている間に二人が両側からピトッとくっついてきた。
今日は二人に話があったけどもう眠いし、明日でいいや。明日……もう今日か? うん……寝よ。
「おはよー‼ 起きて! 朝だよ!」
朝から元気なエレン目覚まし。いい匂いが漂ってくるからもう朝ごはんの用意もできているんだろうな。
エレンは残念勇者だが、出来る嫁感だけは半端ない。但し料理に限る、だけどな。ん? そうすっとやっぱ残念か?
エレンは洗濯に関して誰でもできそうな洗濯機でさえまともに動かせないし、あまつさえ故障させてしまう。なんとか洗えたとしても洗濯物は干しても畳んでもグチャグチャになっていた。掃除にしても似たりよったりの残念さだったな。吸引力が衰えないはずの掃除機がヨボヨボになってたしよぉ……。
代わりに洗濯はナイマが出来る嫁感を存分に発揮していた。アイロンがけまで完ぺきにこなしていたもんな! ただ掃除に関してはエレンとどっこいどっこいだったけどね。料理は……ガクガク……思い出したくもない!
そして家事分担が決まっていった。炊事はエレン、洗濯はナイマ。清掃は俺の担当。ちなみに買い物は絶対に三人で行くことになっている。その方が楽しいしな。否はない!
飯を食いながら昨夜話そうとしていたことを二人に話すことにした。
「あのさ、来週末から長い休みになるんだ」
「えっ‼ お仕事クビですか⁉」
「えっ‼ じゃあ、常時接続OK⁉」
ナイマは一応、仕事の心配をしてくれたようだ。それにしてもクビとは何なんだとは言いたい。『大丈夫だよ、ただの長い休みだから』と頭を撫でておく。
「むふぅ///」
一方エレン。
なに常時接続って⁉ ど・こ・を・常時接続しっぱなしにするつもりなんだ⁉ エレンのことだから聞くまでもないけどな⁉
「あだっ‼」
とりあえずお約束なので、エレンにはデコピン食らわしておく。
「次の土曜からそん次の日曜日まで九日間休み。お盆休みって言われている長期休暇だよ」
「へ~ そういうのがあるんだね。そーいえばナイマが来た直後に
「……
「では、お義父さまとお義母さまがいらっしゃるのですね? わたくし……緊張します!」
「そそそ、そういうことなの⁉ どうしよう! ちゃんと出来るかしら⁉」
二人はわちゃわちゃと騒ぎ始めるが、そんなに慌てることも緊張することもないぞ⁉
カチカチ具合なら両親のほうが上だろうからさ。
ずっと今年は一人で行くつもりだったが予定を変えた。予定も変わった。
しかし全国的休暇期間の一週間前に思い立ったのが悪く、生憎というか当然ながら列車の席もレンタカーもまったく空きがなかった。
俺一人なら最悪在来線の鈍行列車で数時間揺られることも厭わないのだけど、エレンたち二人を伴うと考えると、なんて悩んでいたら連休中は海外旅行に行くという課長のご厚意で車を借りることができた。課長という名の神爆誕!
『 もう一〇年超えのオンボロだから、さすがに廃車になるくらいやられる困るけど、汚しても何しても気にしないから存分に使ってくれ』
そんなこと言われて借りてきたんだけど、確かに年式は一〇年以上前のものだけど走行距離も多すぎず少なすぎずでボディも内装もくたびれすぎていることはない。
大事に使われてきたことがわかるので、俺も借りた以上はきれいに使わせてもらい出来る限りキレイにしてお返ししよう。
「じゃあ、二人とも乗って。あ、もし途中で気持ち悪くなったりしたら早めに行ってくれよ?」
「気持ち悪くなったら、逆に洋一が気持ちよくしてくれるの?」
「……留守番するか? エレン」
「……スミマセン」
エレンが馬鹿なことを言っている間にナイマは助手席にちょこんと座っている。
「あ~! あ~! ズルい! ナイマっズルい!!」
「エレンがグズグスしているのが悪いのではないですか?」
「ぐぬぬぬ……」
「休憩ごとに席を交換すればいいだろ? すぐに着くところじゃないし、道もどうせ混んでいるんだからのんびり楽しみながら行こうや」
「「はーい」」
この二人はいつも喧嘩しているような感じだけど単なるじゃれ合い。異世界で殺し合った敵同士だったとは到底思えないんだよな。
「洋一がマイナとの仲を取り持ってくれたんだし、もう二度と殺し合いもしないし、昔のことは昔のことだよ」
「本当ならなくした命です。全ては洋一様のものですから大事にします……」
「いや、ナイマ。ソレ重いから⁉ エレンぐらいに軽く捉えてね? ね?」
「……はい! 仰せのままに!」
「……うん。ま、いっか」
ルートはどうすっかな?
中央道は――上野原IC先頭に二〇キロ以上渋滞と。
じゃあ、関越は?
花園IC先頭で川越まで断続的に渋滞……と。
高速道路は無しかな? 景色も灰色のフェンスばかりなのにずっと車に乗りっぱはつまらんもんなぁ~ やっぱ一般道で行くしかないかね? つーても途中からは山道で見るものは樹木ぐらいしかなくなるけどノロノロ渋滞にハマっているよりかはマシだろうな。
長時間運転でもたまに疲労回復に魔法をちょいちょいってかけてもらえばいいし、のんびりと楽しく移動がいいよな、やっぱ。これこそ正しい回復魔法の有効活用法だよ? 絶対に正しい使い方だと思うんだよな⁉
車のナビを設定する。到着予定時刻は今から約四時間後一五〇キロ弱の行程だ。
往復で三〇〇キロ。向こうでなんやかんや動くと結構な距離を乗っちゃうな……課長に何かいいものお土産に買っていこう。車をキレイにして返すだけじゃ申しわけないわ、これじゃ。
「忘れ物はないよな? ん、ではしゅっぱーつ!」
「「おー!!」」
向かうはX県S町の両親の家。帰郷するのは二年ぶり。
隣家の人にもいろいろ迷惑をかけてしまっているから、今回はたっぷり土産も用意した。
父さんも母さんも俺がエレンとナイマを連れて行ったらびっくりするだろうな。たぶんそうなっただったろう。
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大体1話これくらいの文量になっております。
★★★の方もよろしくお願いいたします!
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