第21話 日常? (上)

こんにちは。

今回は短話です。上下二話構成のなんてことない? 日常です。

>>>>>



 よっ!

 諸君は勉学に労働に励み勤しんでいるかね⁉


 俺か? まあぼちぼちだな。

 だがしかし、夜の労働には励み勤しみ努めて誠実に楽しんでるぞ⁉

 クククッ、羨ましいか?


 えっとな。

 今日は、ナイマが家に来てちょっとした頃の平和な日常風景だ。

 あれを日常って言っていいのかは知らんけど⁉

 んじゃ。



 *†*:..。..。..:*†*:..。..。..:*†*:..。..。..:*†*



 今年の梅雨入りも例年通りの六月初旬で落ち着いたみたいだけど、その数日後には『本日は快晴なり』の皐月晴れという始末。

 ちなみに旧暦の皐月は今の六月ころ。梅雨の真っ只中の晴れた日を皐月晴れと言うらしい。GWに皐月晴れとか言うのは誤用だな! ま、どうでもいい話だけどな!



 今日は土曜日だし、徒歩で買い物に行くのに雨降りでは面倒くさいの局地みたいなもんだからこの快晴に文句など一切ない。お天道様には感謝感激雨あられ……雨は降んなくていいよ?

 明日からまた暫くはぐずついた天気。そんなことを昨夜ネットニュースのお天気お姉さんが言ってたような気がするから、昨夜も恒例のおたのしみ大会だったけど今朝は休日だというのに頑張って早起きしたさ。


 午前中は近所のスーパーマーケットにエレンとナイマの二人を連れて一緒に買い物をしただけなんだけど、二人とも楽しそうにはしゃいでいた。

 とくにナイマは実質初めての外出だったから余計に楽しんだろうと思うんだよな。目に映るもの全てが珍しいんだからそれはどんなアトラクションにも負けず劣らずなんだろう。

 そういえばエレンを初めて外に連れ出したときもはしゃいでいたな。それが今やナイマに講釈垂れてんだから笑える。先達者気取りがあまりにも微笑ましいんだな、これが。


 先日、ナイマの身分証明を作成するために札束が飛んでいったので、当面の間は節約生活になりそうだけど気重にはなりそうにはないのはいいねぇ! 代わりに財布はエアロゲルで出来てんじゃねえかと思うほどに軽くなったけどさ! 悔いはない!


 金なんて後からいくらだって取り戻せる、たぶん。

 だけど……。ナイマに何かあってからじゃ全部遅い。エレンもだが、ナイマだって、たった二週間ほどしか経っていないけど俺にとって大事なひとなんだからさ。


 ……などと俺らしくないことをぼやっと考えて思考の海ならぬ梅雨の水たまりに片足突っ込んでいた。靴下までグチュグチュだよ。




「早く帰ろうよ~ お腹すいたぁ~ 朝はスープだけだったから余計にお腹すいた! あっ! さっきすーぱーまーけっとでナマらーめん買ったよね! 私それがいい‼ 洋一っ、いいよね⁉」


 エレンは馴染んだ。たったひと月で。

 日本に。いや、日本の食事に、かな?


 俺が仕事でいないときには、エレンも自炊もするようになった。元々魔王討伐遠征で食事は自分で作ることも多々あったそうなので、うちにある未知の調理器具と食材が学習とともに既知となれば難しいことはなかった。


 つっか、俺よりも器用に刃物を使うので出来上がる飯もあっという間に上達した。

 話し方も固っ苦しいさがちょいちょい残っていたが今はまったく出ない。勇者様風な語り口調は実は俺、好きじゃなかったしな。

 お料理上手なかわいい奥さんって最高じゃない?!


「ねえ? 洋一、聞いているの? ナマでいいよね。ナマで」

 思いの外深かった水たまりからエレンに振り向く。ナマナマうるせぇな! いつもナマだろ? 可愛い奥さんよぉ〜


「おっと、すまん。生ラーメンで構わんぞ。野菜マシマシでよろしくな⁉ あ、ナイマは俺の横でじっとしておけよ⁉ 今朝、洗濯はやってもらったんだから何もしなくていい。な? なにも、しなくて、いい‼」

「……うん」


 一人二袋までの十円を三人で六袋買ってきたので、野菜と言っても、マシマシなのはもやしだ。

 それとナイマ。ナイマはなぜか洗濯の腕が素晴らしくいい。洗濯機の使い方は誰でも出来るが、洗濯物の干し方やたたみ方が素晴らしい。アイロンがけも非の打ち所がない。かつて魔王だったのに……何処で身につけたスキルなん?


 それに対して料理は……クリーチャーが生まれた。


 なぜ美味しそうな食材からドリームキャッチャー的なクリーチャーが生まれるのでせうか? 俺たちがヤツラの食材化しそうだったんですけど?


 二度とナイマには料理をさせまいと心に誓ったんだよ……

 ちなみに件のクリーチャーはエレンが討伐後、再調理してスタッフが美味しくいただきました。




 さて、阿呆なこと考えている間に俺たちは自宅に着いていて、何もするなと厳命されたナイマは俺の膝枕で寝転がる。顔の向きが俺の方を向いているのがやや気にかかるが?


「洋一様……。わたくしもエレンのもっているすまほが欲しいです」


 エレンにはスマホを買ってやった。字が読めなくても音声アシスタントで何とか出来るので重宝している。

 カメラを文字に向けるとスマホが読み取って読み上げをしてくれると文字が読めないエレンでも何が書かれているかわかるという寸法。


 口頭言語や音声言語は二人ともほとんど理解できるのに対し、文字言語はこれっぽっちも理解できなかった。日本語も英語も他の言語も全部。

 時空の狭間の理屈なんてもんは俺にはわかんないから『そういうもの』ってこと以上は考えない。どうせ考えたってわかりゃしない。そもそもこのことは他人にも相談できねえしな……


「そうだな。これから先、常に俺かエレンと一緒に行動するわけじゃないし、連絡方法も用意しておきたいしな……明日買いに行くか⁉」


「ほ、本当ですか⁉ ありがとうございます! 洋一様!!」


 ナイマは膝枕から飛び上がり熱烈なキスをしてくるが舌までジュルジュル吸ってくるのは当初予定にありましたか? ないよね? 片手も俺の下半身に伸びてますよ?


「くぉらっ! ナイマ! わたしがいない隙きに何してるの! ――わたしも混ぜて!」

 ……違うだろ?




 二人とも引っ剥がして昼飯にする。

 どんぶりからこぼれ落ちるほどのもやしの山盛りラーメン。にんにくも三人でチューブ一本使ってるなんだかすごいやつ。

 餃子に白飯まで用意されたそれは高校か大学の運動部員の飯のごとくテーブルの上に鎮座している。


「これ食いきるのか?」

「洋一には足りないの?」

「んなわけあるかい⁉」


「美味しそうです! 早く食べましょう!」

「ん、そだな。いただきます」

「「いただきます」」


 …………。

 ………。

 ……。


「うえっぷ……食い過ぎだ」

「あはは! オークが三匹転がっているみたいだね!」

「うわぁ~ エレン! オークは止めて! せめてあの聖女あたりで!」

 聖女って言うぐらいだから夜伽大好きなポチャっ娘(過小表現)のことだよな……


 そういえば……今更感が拭えないんだけど。


「なあ、エレンにナイマ。ちょっと聞きたいことあんだけどいいか?」

「ん? いいよ。洋一にならどういう体位でどこに当ててもらうとタマラナイかまで全部教えるよ!」


「エレンの頭ン中はそっち系しかないんか⁉ んなことは知ってるからいまさら言わんでいい!」

「……えへ、えへへ。さすが洋一私の全部を知ってくれているんだね……えへへへへ」

 ちょっと可愛いと思った俺もダメなんだろな。


「わたくしのことはこれからですね。えっとですね、体位は――」

「ちょい待て! そんなことを今聞きたいんじゃないんだよ!」


「えっ……わたくしのことには興味なないのですか⁉ グスン」

 なんでそんなことで落ち込んで泣くんだか……


 しかたなく俺はナイマを引き寄せて抱きなから耳元で囁いてやる。

「それは後でベッドの上でしっかり教えてくれよ……な? ナイマ」


 ナイマはビクンッと体を跳ねさせると真っ赤な顔して嬉しそうに微笑んだ。

 エレンにしろナイマにしろちょろいし、甘えん坊だし、何よりエロすぎるんだけどこの先大丈夫なんかな? 若干不安よ⁉ 目指せ安心安全な異世界日本での生活だよ?


 ま、後学のためにはちょっとぐらいはそういった話も聞きたい気持ちもあるのだが昼下がりに強烈なにんにく臭をぶちまけながら聞くもんじゃないだろ? なんかやる気満々ぽいじゃん?


「いや、話を戻すけど聞きたいことってな。二人が生まれた世界、こっちから見れば異世界ってどんなところだったんだ?」



>>>>>

ぎっくり腰が完治していない中なのですが、コルセットしたら腰回りがあせもだらけになりました。痛いやらかゆいやらで大変です。

明日も同じ時刻に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る