第15話 ?聖?⑤

 5話編成の5話目。最終回です。

 ありがとうございました。

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 その後、まだ土曜日の夜も更けていなかったので四人で一緒に飯を食いに出かけた。


 案の定まともな飯などバレリオは食っていなかったようで、ファミレスの料理でも泣きながら美味い旨いと食っていた。



「さ、腹もくちくなったし風呂入って寝るか?」

 いつものように二人がぴとっとくっついてくるが、今日はもうやんない。


「エレンはバレリオと二人で隣の部屋行って寝ろよ。最後にお姉さましてやりゃいいだろ? ナイマも昼間、三発ピカなしの稀有なノーマルえっちを堪能したんだからもういいだろ?」


 なんだかこの世の終わりみたいな顔しているのが二人と、俺を神と崇めているのが一人。



 隣の部屋からはずっと変な声が聞こえていたけど聞こえないふりしておいた。

 ナイマは……初めての俺との二人寝なので、可愛そうだから少しだけ甘やかせてやった。でもそれだけ。俺も今日は情報量多すぎてキャパオーバーしているんでもう寝たいんだよん。


 翌日曜日は久しぶりの長い睡眠を取ったので俺はすこぶる快調。一方、げっそりしたエレンとツヤツヤのバレリオの対比がやばかったけどな。


 まともな服装を着させてバレリオも連れて異世界観光をしてやった。俺からすりゃとんでもなく日常だけど三人には有意義だった模様。エレンもナイマも最近はどこにも連れて行ってないもんな。今度温泉にでも連れて行こうかな?



「あんさ、バレリオさんや。あんたこっちに来た方法は聞いたけど、戻るのってどうするつもりなんだ?」


 ナイマのバインドも維持できないほど魔力が枯渇しているようだし……


「か、帰れません……」

「え? 帰れないって?」


 既に異世界渡りの研究に七年もの年月を費やしてしまっていたバレリオは異世界渡りに途方もなく膨大な魔力が必要なことはわかったところで、残り半分の魔力が貯まるまで待てずに片道切符だけで来てしまった。


 更には世界渡りの魔道具もこっちの世界に来た瞬間に魔力を全放出し終わり粉々に壊れた。


「魔国滅亡直後に世界的な魔力の減衰期に入ってしまい、計算では往復に十分な魔力が満たされるのに残り一五年以上って出たんです。開発期間の倍ですよ? 私にはとてもじゃないですが待てませんでした……」


 エレンやナイマと違って温かい家庭で育ったせいか待ってくれている人がバレリオにはいる。一方、世界は混乱し混沌としてヒトとヒトの戦争も絶えないという。

 そんな中でも剣聖としての努め、女として子を成すこと、家を存続させるのは自分の役割だとは思っているようなので、兄弟のいないバレリオは絶対に戻らないとならない。

 但し、唯一の頼みの綱の魔道具も粉々に壊れた……帰れるという希望も粉々に。






「一つだけ方法があるよ」

「エレン? いくら可愛い妹分を慰めるったって根拠もない話は駄目だぞ?」


「根拠はあるよ……ナイマに次元転移魔法を使ってもらってあっちにもう一度戻してもらうの」

「それこそどうやって? 膨大な魔力が必要なのにナイマが持ち得る魔力で出来るのってピカっていうのといくつかしかないじゃん」



「……洋一の生血よ」



 …………え? は? 生血マヂ



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 自宅寝室のキングサイズのベッドの上に俺とナイマが抱き合って寝ている。


 ベッドの横ではエレンとバレリオがじっと俺らの行為を見守っている……いやエレンはただ見守ってないな。よだれがすごいもの……


 行為って言ってもいつものヤツではないよ? 確かに俺、いま、ナイマに全身をちゅーちゅー吸われてるんよ?


 俺もナイマもマッパ――マッパになる必要はないんじゃないかと問うたが、絶対に必要とナイマに押し切られた――だし傍目にはいつも通りのエロいことやっているようにしか見えない、と思う。


 だけど……俺らがいましているのは――ちくっとしてちゅーちゅー。


 ナイマが吸血鬼みたいになった牙で俺の身体を噛み、その後に流れ出る血を彼女に吸われているところ。

 そんでもって全身から出血しているためなのか悪寒が半端ない。さっきから何度も気を失いそうになっているのにそれに反して俺の下半身は痛いぐらいにガチガチ。


 それを見てエレンのよだれがとまらないんだけどな……ほんと残念勇者だよ⁉


 血の匂いなのか、血に含まれる俺の魔力なのか知らんが吸っているナイマもエレンも、ついにはバレリオまでが上気した顔してハアハアしているこの風景……


 何かやばい儀式でしょうか? 


 全身から流れ出る血が怖くてなのか? はたまた、ただの失血してなのかよく分からんがいつの間にか俺は気を失っていた。


 一度気を取り戻したときにはエレンとナイマとなんでかバレリオにまで抱かれていた。たぶん俺の回復のためにみんなで抱きついてくれているのだろう……たぶん、な。

 このままなら次に起きるころには傷も失血の状態も回復しているだろうし、ナイマの魔力に酔った状態もおさまっているだろう……もう一寝入りしておこっと。




 次に目が覚めて起きたら俺に聖剣……じゃなくって剣聖が刺さってた!


 いや……厳密に言うと刺しているのは俺のほうか?


 そもそもなんでそうなっている? 目が覚めたら、バレリオと絶賛エッチのマッサナカですよ? 理解が追いついてこねえんだけど……


「エレン?」


 思い出のため?


 誰の?


 バレリオの?


 は?


 バレリオって、お姉さま百合じゃなかったの???


 既に二五歳で行き遅れているから、せっかくのいい機会だし最初の男は洋一がいいと思ってと、とエレン。


 残念ぷりに磨きがかかっているな!


 政略結婚のお相手さん、もしいるのならごめんなさい。バレリオさんをいただいちゃってます。そんでもって……これが……なかなか……


「私、お姉さまでなくても……洋一さんなら……男でもいい……です。すごく……いい……で……あっあっあっ」


 いびきを掻いて血色のよだれを垂らして寝ているナイマの横で俺たちは何をやっているのだろうか……











 連休も最終日。

 起きたナイマは魔力が膨大となっているようで人が変わったかのような威圧を感じたが、ちょっと驚いて俺が目を背けた途端、威圧は消えてシュンとして俺に甘えてきた。


 かわいい。そんなのは知ってるけど可愛い。一〇〇歳越えだけど可愛いものは可愛いのでいいのです。





 次元転移魔法の発動は周りに影響が大きい。


 だから周囲に何もないところが必要で、俺の爺さんが所有しているおあつらえ向きの山に車でやって来た。ここなら私有地なんで当然誰もいないから多少の被害には目を瞑れる。


 エレンも時空の穴に自分が吸い込まれないように魔力の補充を始める。要するにわざわざこんな山奥まできてカーセックスをし始めたんだけどさ……

 そういうの必要ならなんで昨日のうちに言わない? 最後プッシャーで魔力使い切ってたろ?

 けっきょく魔力量十分のナイマと何故か物欲しそうにしていたバレリオのまで相手して、とうとうお別れのときがやってきた。



 ナイマがブツブツと詠唱をし始めると俺でも分かるぐらい周りの空気がビリビリとしてくる。


 ナイマの前方数メートル先に真っ黒な穴が開いていく。最初は針の先ぐらいだったのが今や直径二メートルほどになり、轟々と周囲にある枯れ葉などを吸い込んでいる。


 バレリオは一人そこに向かい歩いていくが穴に入る一歩手前で振り返る。


「エレンお姉さま、今生の別れです。お元気で」

「聖女マリノのように転生もありなん。達者でいろよ」


「魔王グソン様、いいえナイマ様ありがとうございました。あなたのことを勘違いしていたわたし達を許してください」

「ん、構わない。わたくしとて洋一様に会わなければここまで変わらなかったはず」


「最後に洋一様。お腹の子は、向こうで大事に育てます。ご安心ください」

 ? !!!!!!! え? なんのこと???? お腹の子って? え? なに?


「ああっ⁉ リオちゃん! 洋一の子を身ごもったの⁉ ズルい!!!!!!! この卑怯者!!!」


 バレリオはいつの間にか不妊の加護を解いていたようで、俺の精を受け子が授かったそうだ。


 子供が出来たかどうか、そういうのはあっちの人は直ぐわかるらしい。体内魔力の流れ方が明らかに違うんだって……おいおいマジかよ、俺がパパ⁉



 男の子らしいってことまでわかった。なんだろう若干モヤッとするけど、元気で暮らしてくれたら嬉しい。

 それにさ……一度はこっちに来られたんだからもう一度くらい来られるんじゃないかな?


「彼女、もう会えないみたいなこと言っておりましたけど……実は会えますよ⁉ わたくし、しっかりとの地の座標はマーキングしましたからね! 一度と言わず何度でも! 何度でも! でも、まあ月イチぐらいはバレリオとお子ちゃまに来てもらわないとあっという間に大きくなってしまいますね⁉ 月イチで血祭りフェスティバルですね!」


 大体こっちよりあっちがざっくり一〇倍、時の流れが早いからな……うん? 最後の方は意図して聞かなかったよ、聞きたくないもんな。血祭りって……何よ?



 ――彼の地でバレリオと洋一の膨大な魔力供給DNAを継いで生まれた息子が後に混乱の極みだった大陸の統一を成し遂げ、ムカイ王国の建国王になることはまた別の話。





「さっ、帰ろうか?」

「洋一様!! わたくし魔力が枯渇しています。直ぐに補充を!」

「わたしも吸い込まれるのを耐えるのに魔力を使い果たしたので補充して!」

「「あ、あと! わたし(わたくし)も子を成したい!」」


「……まあ、子供は生む前に作る作業が先に必要だけどな」

「「っ‼ えへへへへへっ♡」」


 俺たちの子のいる家庭、か……ふふっ、それもいいかもな。



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 最初の公開、数十話数万文字の作品の中で、たった16千文字、5話っきりの本作がずっとカテゴリ上位にいるのをみて私は驚き以外の感情を失ったのを覚えています。普段、ランキングなどは見ないので、驚きも喜びも綯い交ぜな複雑な感情でした。

 ゲームも最近は殆どやっていないので魔法や勇者周りの知識が乏しく、おかしな点も多かったと思います。それでも皆様に読んでいただいたことは、感謝しかありません。


 魔王辺然り、今編然り。初作勇者編を越えるのはなかなか難しいものです。


 勇者編、魔王編併せても32千文字ちょいで、ひと月も頑張ってくれて、エレンとナイマには頭が上がりません。洋一は……まあ、いいやつだよな。

 剣聖編併せても50千文字強で読みやすいですので、ぜひともお友達にもご紹介ください。ちょっとばかり、あなたの品性が問われますけどね……


 お目汚しとなったかもしれませんが、今後も精進しまた面白いと言っていただけるような作品を生み出したいと思います。

 その節は、どうぞ★の2つや3つをくれてやってください(笑)


 ありがとうございました。


※2020/5/28追記

サイドストーリー下書き終わりました。終わる終わる詐欺ですみません(汗)

10万字までちびちびと書いてもいいかな……なんてね。

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