第9話 魔王④

連続5話中の4話になります。

連日1話ずつ公開していく予定です。次回最終回完結になります。

どうぞよろしくお願いいたします。

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 二人の話を聞きながらもマイナにはさっき買ってきた特売品のたっぷり袋詰惣菜パン菓子パンを食わせておいた。


 そのせいでマイナの『うんまいっうま!』が話の間に二〇も三〇も挟まるのでそもそも何か説明されても『パンが美味いようだ』としか俺の頭には残らない。どうせどうでもいい話だったんだろうけど?


「でも、本当はエレンさんではなくてエレンさんの隣にいた憎き美聖女マリノを時空の狭間に落としてやるつもりだったの。最後の仕上げで失敗しちゃったの⁉ テへ」

「え? ホントに?」


「うん。ごめんなさい、エレンさん。わたくしが魔法の発動を失敗さえしなければエレンさんはこちらの世界には来ることは無かったのです」

 聖女マリノ《あいつ》はわたくしのことを醜女醜女ブスブスといっつも蔑んでたでしょ? わたくし、結構ムカついてたの……と、改めてエレンに頭を下げて謝る元魔王。


「ううん。失敗してくれてありがとう。そのお陰でわたし今が一番幸せだもん」

 俺からも礼を言っておこう。ベッドの上で相撲は取りたくない……まっ、その前にくだんの聖女だったら拾うことすらしないけどな!


「ありがとうございます。エレン様」

 ナイマは泣きながらエレンの手を取って感謝している。俺にも感謝ってウソウソ⁉ 要らないから! もう夜伽は間に合ってますので、本当ですよ?


「俺のことはホントにいいから、な?」

「わたしのことも様もさんも付けないで、ただのエレンでいいからね」

「はい。お二人ともありがとう……ぐすん」


 感涙にむせぶマイナと優しい眼差しのエレン。

 強敵と書いてと読む、みたいな感じで仲良くしてくれてありがたい。


 元はと言えば俺が二人とも拾ってきたのに喧嘩されちゃ堪んないもんなぁ~ 野良猫拾ってきたみたいな言い方だけど……似たようなものか? 兎も角、目出度い目出度い。



「そういえばさ、エンなんちゃら王国とマンマン魔国との戦争の原因ってなんなの?」

「洋一は本当に国名を覚える気が一切ないんだね……」


 当たり前じゃん! 要らん情報だし!



「聞くも涙、語るも涙の物語ですが――」


 ナイマが語りだすが、もう夜も遅いので原稿用紙一枚程度で抑えて、ヨロシク。


「…………はい。では掻い摘んで――


『魔族の王子は一〇〇年に一度しか生まれず、その生命も四〇~七〇年で尽きてしまいます。

 そして待ちに待った魔族王子は痩せてちっぱい(異世界基準)なわたくしナイマを気に入らず、偶々見かけた王国のふくよかな王女と恋をし、そのまま婚姻してしまったのです。

 魔族王子は特段魔力もスキルも有さず、魔国女王のための子作り専用の男でしかないので、見た目も能力もまんまが得意な人間なのです。どうやら王国の誰もが彼を魔族の王子とは気づかなかったようです。

 一〇〇年以上待ってこの仕打にわたくしナイマは、いや魔王グソンは男を取り戻すための嫉妬に狂った戦争へと進んでいったのでありました』 ――オシマイ」



「ナイマ……一〇〇年以上待ったってお前歳いくつなんだよ? 案外とババアなんだな⁉」


「えっ⁉ 洋一の気になる点て、そこなの⁉」


 あん? なんかおかしいか? 知らん国の戦争事情よりも目の前の女の年齢の方が重要だろ? ふつう。ナイマ、泣かなくていいぞ⁉ 見てくれは無問題だから!


「じゃあ、なんで洋一はナイマに戦争の原因聞いたの?」

「え? なんとなく?」


 ナイマが泣いてっから話を逸らそうと思っただけじゃん……結局、別件で泣かしたけど。


「エレン、ごめんね。そんな理由で殺し合いさせちゃって……」

「ううん、ナイマ。あっちではわたし達みたいな痩せぎすはひどい扱い受けていたんだから仕方ないよ! 気持ち分かるもん!」


 ガッシと抱き合って慰めあっているところ悪いんだけど、もう遅いし、俺、眠いんだよね?


「さ、用件は済んだことだし、風呂入って寝よ」

 ガシッっと腕が掴まれる。


「なんだよエレン。もう二四時になるから風呂に入るんだよ?」

「入浴後、そのまま寝る気じゃないよね?」


 ぎくっ‼


「そ、そんな訳無いだろう?」

 どさくさ紛れは無理でした!!! ざねーんざねーん……とほ。


「そうだよね、洋一に限ってウソはつかないよね? さっきもそう言っていたし⁉ でも、今日遅くなったのは、わたしの所為でもあるから……」


 じゃ、じゃあ諦めてもう寝る?


「今夜は三回だけでいいよっ!」

「結局、ヤるんかーいい!!」



 でもその前のに片付けなければならない問題が……


 もう何個目だか分からない包装を破いては未だにモキュモキュと美味そうに菓子パンを食っている元魔王の処遇である。


「先ずはともあれ、エレンがあいつを風呂に入れてやれよ」

「え? やだ。ナイマのこと洗うの大変そうだもん。なんか臭うし」


 結構酷いことストレートに言うのね、エレンて……。俺も人のこと言えないけどさ。ほら、ナイマ……泣いてるよ?


「ええ? じゃあ、俺があいつと一緒に風呂入ってもいいのか?」

「………う~ん………う~ん……」

 そんなに悩むことなん??


「し……」

「し? なに?」

「し、仕方ないな。洋一、マイナのこと頼む。同郷のよしみってやつかな? よろしく頼んだよ⁉」


 はい? マイナと俺が風呂に入ってもいいの? マッパでいろいろ見ちゃうし見せちゃうZ《ゼーッ》⁉


「あ、いや。よ、洋一はマイナは可愛いと思うか?」

「なんだよ、いきなり……。まあ、可愛いな。年齢無視すりゃ結構な美人さんだと思うが?」

 正直、マイナもかなり俺の好みに相当寄っているのは間違いないんで間違いが起きちゃうかもYO!


「洋一がマイナのことイヤじゃなければ構わないだろう。じゃあ、マイナを頼んだぞ」


 エレンの質問の意図も答えに対する反応も意味分かんない……どうにもこうにもエレン自身がマイナを洗ってあるのだけは絶対に嫌なんだってことだけは分かる。




 ――結局、狭い風呂に三人で入った。


 マイナも俺の前で裸になることにこれといった抵抗は無いようであっさりとマッパになった。思いの外良いものお持ちでした。取り敢えず拝んでおこう。


 異世界あっちでは男女混浴は当たり前なのでこれといった忌避感は無いそうだ。湯に浸かること自体が贅沢なことなので、一々気にしていられないらしい。

 それに、二人とも自分の(異世界基準で)貧相な身体を俺が好きと言ってくれるので逆に嬉しいそうで……


 取り敢えず拝んでおこう。


 さて、ナイマはやっぱり汚れていて、洗うのが非常に……つっか、めっちゃくっちゃ大変だった。エレンが嫌がる意味がよ~くわかった。


 ナイマって黒髪かと思ったらきれいな銀髪だったのよ。黒いのは全部魔王城が焼けた落ちた際の煤とか汚れでやんの……エレンのやつは現場にいたからそれを知ってやがった模様。おのれ許さん。


 因みにドレスは最後の決戦前に律儀にも着替えたそうなので、黒いのは煤じゃなかったです。でも臭かったのでソッコー捨てました!


 何故かエレンのことまで俺が隅々まで洗わされたんだけど、二人がほっこりした顔して湯船に浸かる姿は眼福でしたので特別に許す。取り敢えず、二礼二拍手で拝んでおこう! パンパンッ!


 ナイマはエレンよりは細身で背も低いが、なかなかのナイスバディ、出るとこ締まるとこメリハリバディがとても良い。それに特筆すべきは良い尻もお持ちだと言うこと。連れて帰ったとき散々触ったから知ってたし!


 身体を洗ってやっていても肌はスベスベだし、弾力もあってさわり心地がエレンに負けず劣らす良かったです。とても一〇〇歳超えのババアとは思えないな! 異世界摩訶不思議!




 風呂上がりにはナイマは直ぐ寝てしまったので、寝室の隣の部屋に寝袋とマットを敷いて寝かせてやった。疲れたんだろう……ゆっくりと寝ててくれ。こっちは三回戦が待ってるんでな?




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★評価など頂けましたら作者は喜びます。

ただ読んでいただいただけでもありがたいです。次話最終回もよろしくお願いいたします。

明日の晩が最後です。

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