side. エイミー(12)
あはは。慈愛の聖女の力がこんなに強いとは思わなかったわ。
王様も、大臣も、騎士たちも、みーんなあたしの言う通り。
はっきり言ってもうここまで行くと洗脳よね。
特にあの宰相を落としてからはとんとん拍子だわ。
慈愛の聖女の力は、あたしに好意を持っている相手にしか効かないみたいなの。
でもね。ちょっとでも好意を持っている相手なら絶対に効果があって、何度も言葉を聞かせれば必ずあたしの言うことを聞いて、あたしの言った通りに変わってくれるんですって。
宰相がそれを見抜いたおかげで、お城の人間は全員あたしのものになったわ。
慈愛の聖女であるあたしを無条件に信じる、あたしのために全てを捧げる、そう言って何回かお話してあげたらみんなそう信じてくれるようになったの。
それから、民もそうね。宰相が書いた原稿を読むだけの演説会をやって、傷ついた兵士をわざと道端で治してあげたり。ああ、あとそれからはした金を恵んであげたりとか。
とにかく、いい人っぽい感じの事をやってから言葉を聞かせてあげればすぐにあたしが慈愛の聖女だと信じたわ。
あたしはカール様たちを愛しているから女王様になる気なんてないけれど、実質的にはもうあたしの国のようなものね。
ただ、オスカーは解放されたって聞いたのにそのまま第二王子派に鞍替えしたっぽい父親に捕まってどこかに連れて行かれちゃったのよね。
クロードに至ってはずっと連絡すらつかないし。
それに二人とも手紙を出してるのに返事も寄越さないなんておかしいと思わない?
あたしがちゃんと攻略したはずなのに。
ま、でもきっとそれは後でお話すれば大丈夫よね?
「エイミー!」
あたしが一人で窓から外を眺めていると、執務を終えたカール様がやってきたわ。
「カール様ぁ」
あたしがカール様のもとへと駆け寄ると、カール様は優しくあたしを抱きしめてくれるの。それから情熱的にキスをしたわ。
「エイミー、会いたかったぞ」
「あたしもです」
端正な顔のカール様はいつ見ても素敵だわ。
「エイミー」
「あ、マルクス!」
マルクスもあたしのところに来てくれたわ。するとカール様はあたしを放してマルクス様に預けてくれるの。
「エイミー、会いたかったです」
「あたしも」
そうしてマルクスもあたしをぎゅっと抱きしめて、カール様と同じように情熱的にキスをしてくれたわ。
「ふふ、二人とも来てくれて嬉しいわ」
「俺にはエイミーしかいないからな。エイミーの幸せが俺の幸せだ」
「私もですよ。エイミーのためなら何だってできます」
「ありがとう。カール様、マルクス。あたしもぉ、愛しています。だから、あたしだけを愛して」
「ああ、当たり前だ」
「私が他の女を見ることなどありませんよ」
そうなの。こうやって毎日あたしだけを愛して欲しいって言い続けたら、すぐにこんな感じになってね。今ではあたし以外の女性を見ても何も感じなくなったそうよ。
完璧よね。もうお城のどこでこういうことをしていても誰も文句を言わないわ。ううん、むしろ好意的に見てもらえるわ。
最近はベッドも二人と一緒だし、本当に充実しているわ。
「そうだ、エイミー。君を慈愛の聖女として認定すると教会から連絡があったぞ」
「まぁ、ついに!」
あたしはカール様のその言葉に嬉しくなってつい大きな声を出しちゃったわ。
「はい。地道に説得した甲斐がありましたね」
「本当ね」
そう、あたしは地道に教会の神父やらシスターやらと会って少しずつ説得していったの。
特に孤児院への支援は効いたわね。
孤児院に行ってそこの子供たちにあたしが聖女だって教え込んだの。そうしたら子供たちはすぐにあたしのことを慈愛の聖女だって信じちゃってね? キラキラした目で聖女様、聖女様って言ってくるのよ。
ま、あたしはあんな汚い孤児たちなんかとは本当は一緒にいたくなかったんだけど、我慢して通ってやったらそこのシスターと神父もあたしの言う事を聞くようになったわ。
そうしてちょっとずつ良い噂を流してもらって、気が付いた頃には魔女なんて話はなくなっていたの。
そして今日、ついにあたしは神に選ばれた慈愛の聖女と教会に認められたの。
これでもうあたしの邪魔をする奴はいなくなったわ。
ふふふ、後は外にいる帝国のやつらを何とかするだけね。
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