side. エイミー(11)
ハァ? ハァ? 意味わかんないんですけど!
どうして悪役令嬢と陰キャが生きてるのよ!
それに慈愛の聖女であるこのあたしを魔女として指名手配とか、頭おかしいんじゃないの?
しかも殺しても良いとか、どんだけよ!
そんなに慈愛の聖女であるあたしが怖いのかしら?
そうよね。やっぱり悪役令嬢だもの。
きっとやましいことが沢山あるんでしょうね。でも待ってなさい。
あたし達がすぐに楽にしてあげるから。
そう思っていたら、信じられないニュースが飛び込んできたわ。
え? 悪役令嬢一家のところが国として認められた? しかも戦ってたはずのザウス王国が認めて式典に王女を送った?
おまけにあの陰キャと悪役令嬢の婚約発表?
はぁ? ふざけんじゃないわよ!
その時、マルクスがあたし達の部屋に飛び込んできたわ。
「殿下! 大変です」
「どうした? マルクス」
「レオが! レオが!」
「レオがどうした! 帰ってきたのか!?」
「そ、それが……ひ、棺に……」
「なっ」
「え? レオ……が? 死ん……だ?」
あたしはそれを聞いて目の前が真っ白になったわ。
「エイミー」
でもそんなあたしをカール様がぎゅっと抱きしめてくれたわ。
ああ、ああ、でも、うん。
まだ大丈夫よ。
それにしてもレオを、こ、殺すなんて!
レオは悪役令嬢や陰キャのクソモブと違って攻略対象なのよ? なんで殺してるのよ!
ヒロインで慈愛の聖女であるこのあたしが必ず帰ってきなさいって言ったんだから帰ってこさせなきゃダメでしょ! 何考えてるのよ!
……許せない!
あたしのレオを! よくも!
「カール様! レオを! レオの仇を!」
いいわ。絶対に殺してやるわ。
そうよ。悪役令嬢と陰キャなんてさっさと殺しておけばよかったのよ。
これもあたしが慈愛の聖女で優しくしすぎたから、あんなカスどもがつけあがったのよ。
もう失敗なんてしないわ!
「分かっているエイミー。だがあの卑怯者をどうにかしないと――」
「失礼します! 殿下!」
何よ。空気の読めないやつね。
「あ、慈愛の聖女様も。いつも通りとてもお美しいですね」
「まぁ、ありがとう。お上手ですぅ」
あたしはとりあえず慈愛の聖女様で答えてあげたわ。
「どうした! 何事だ!」
「はっ。エスト帝国との戦線が崩壊、ブルゼーニ全土を失いました」
「なっ! 何だと!? 多少押し返されたとしてもカルダチアは落ちないと言っていたではないか!」
「それが、どうやら我々の知らない秘密の通路があったようで、そこを使われて城壁内から攻撃されました」
「ちっ。それで?」
「はっ。城内にいきなり現れた敵兵に我が方は混乱、兵の半数を失い潰走しました」
「半数も、だと?」
「はっ。そしてブルゼーニ全土を落としたエスト帝国軍は更に軍を編制中です。すぐにでもここルールデンを目指して進軍を開始するものと思われます」
「くそっ」
そんな? 悪役令嬢がいなくても王都は落ちるっていうの?
でも慈愛の聖女であるこのあたしがここにいるのよ? そうよ。負けるわけないわ。
わかったわ。これがラスボス戦に違いないわ。
「あ、あたしがいます。カール様ぁ。あたしがぁ、みんなの戦いを応援します!」
「そ、そうだな。俺たちには慈愛の聖女がついている。負けるはずはない」
「そ、そうか。慈愛の聖女さえいれば、怖いものなどない!」
あたしのこの言葉に皆のやる気はみるみる上がったわ。
そうよ。今こそあたしのヒロインとしての力を見せつける時なのよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます