第7話 町人Aは怪しげなお店で錬金術師となる
コツコツとどぶさらいを続け、そして稽古に学校にせどりにと忙しい毎日を送り、俺はついに 11 才となった。
そんなある日、俺のギルド口座の貯金がついに 1,500 万セントに到達した。
こうして目標額の貯金を終えた俺はルールーストアへと向かった。店の場所については既に調べがついている。
ギルドから中央通りを通って繁華街を突っ切り、そしてそこから高等学園の方へと歩いて住宅街を抜ける。すると小さな商店街があり、そこから路地に入ると治安の悪い地区がある。
その地区の裏路地に地下へと続く暗い階段、ここがルールーストアへの入口だ。
もちろん、【隠密】スキルを使っているので絡まれる心配はない。
ルールーストアが開くのは午後 5 時から 7 時の 2 時間だけ。
俺は午後 5 時ぴったりに入口へとやってきた。
怪しい。
それが入り口を見ての最初の感想だ。
灯りのほとんどない裏路地。表通りからは見えないような位置にぽつりとある階段。階段の入り口にも降りた先にも灯りはなく、ここに店があるようにはとても思えない。
これはもう、怪しさ大爆発というやつだ。
とはいえ、進まなければ何も手に入らない。俺は意を決して階段を降りる。
階段は一度二か所の踊り場があり、最後まで降りると扉がある。
『ルールーストア』
俺は意を決して【隠密】スキルを解除すると、ドアノッカーを叩く。
しばらくすると中から老婆の声が聞こえてきた。
「誰だい?」
俺はドアに対して【鑑定】スキルを使う。ルールーストアに入店するには
俺は【鑑定】スキルが返してきた言葉をそのまま答える。
「今日は東の森で兎が跳ねた。明日は南に移るがその前に食事にしたい」
ガチャ。
ドアの鍵が開けられたのでそのまま店内へと潜り込む。
ゲームで見たあのルールーストアがそこにはあった。
小さな六畳ほどの店内には所狭しと怪しげな品が置かれている。骸骨、トカゲの尻尾、本、乾燥した草花、何に使うのかさっぱりわからない品物ばかりだ。
そして奥のカウンターにはしわくちゃの老婆が座っている。
「いらっしゃい。何をお探しだい?」
「『錬金のスクロール』だ」
老婆の眉がピクリと動く。そして、くつくつとくぐもった笑い声をあげる。
「いいね。あんた気に入ったよ。1,400 万でどうだい?」
「ああ、それでいい」
老婆がニヤリと笑うと、ちょいとお待ち、と言いながら店の奥へと歩いていった。
そしてしばらくするとスクロールと小さな石を持って戻ってきた。
「こいつが『錬金のスクロール』だよ。こっちの魔石はゴブリンの魔石だ。サービスで 3 つ、つけておくよ」
俺はすかさず【鑑定】スキルを使ってスクロールを鑑定する。
────
名前:ただのスクロール
説明:錬金と書かれているスクロール。メモや習字など様々な用途に利用できる。
等級:
価格:1,000 セント
────
俺は舌打ちをするとスクロールをつき返す。
「冗談はよせ。あるのか、ないのか、どっちだ?」
すると老婆は驚いた表情をし、そのあとニヤリと笑う。
「合格だよ。坊や、しっかり目利きが出来てるじゃないか。こっちが本物だよ」
そういってカウンターの下からスクロールを取り出す。
────
名前:錬金のスクロール
説明:【錬金】のスキルを習得できるスクロール。一度使うと消滅する。
等級:
価格:13,000,000 セント
────
今度は本物のようだ。ついでにサービスという魔石も鑑定してみる。
────
名前:ゴブリンの魔石(大)
説明:長く生きて大きくなったゴブリンの魔石
等級:
価格:30,000 セント
────
なるほど、こちらは嘘ではないらしい。スクロールが少し高いのは癪だが、予算内だ。これで良しとしよう。
「わかった。それでいい。支払いはギルドカードで頼む」
そうして俺はギルドカードで支払いを済ませるとスクロールと魔石を受け取る。
俺は店のカウンターでスクロールを広げると、そのまま右手をのせる。
スクロールが一瞬眩しく光り、そして次の瞬間には消える。
俺はギルドカードからステータスを確認する。
────
名前:アレン
ランク:G
年齢: 11
加護:
スキル:【隠密】【鑑定】【錬金】
居住地:ルールデン
所持金: 1,028,005
────
「確かに、錬金のスクロールだな」
「毎度あり」
老婆はそう言うとひひひ、と怪しく笑ったのだった。
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