第五話_言語
渡航して三週間が経った。一週間前から大学生としての生活が本格的に動き出し、勉強に追われている。
僕のかよっている大学は、ブルガリアの国公立大学であり、医療系の総合大学だ。自分に関すること以外あまり興味がない僕は、所属している医学部医学科以外になんの学科があるかは知りもしないが一応、総合大学だということらしい。
僕のグループ(日本の高校でいうクラス)は
ロシアン ×1
ターキッシュ ×1
ベトナミーズ ×1
ジャパニーズ ×1
ジャーマン ×7
の国構成でイタリアンが多いこの学校では珍しく、ジャーマングループとなっている。そのため、グループ内での会話はほぼドイツ語で僕はもちろん全く会話に参加していない。あまり必要な会話はしていないように見えるのだが、授業中のホワイトボードに書かれていることについて話し合うあの、『あれなんて書いてある?』的な会話に入っていけないのが辛い。それが原因で僕は今、絶賛授業に置いて行かれている次第だ。
教授はもちろん全員ブルガリアンで、授業は英語で行われるのだが、あれはもうブルガリア語と言っていいだろう。
訛りがひどすぎる上に、ホワイトボードに書く字は汚すぎる筆記体、聞き取れない上に読めない。まるで、TOEFLのテストを一日中受けているかのようだ。いつかは慣れるとそう思ってしっかりと授業には出てはいるのだが、朝一のオンラインは大概、頭に入らないのと眠気が相まってPCを開き爆睡している。
ブルガリア語、ラテン語、ドイツ語、英語。
この国この大学は、一体どれだけの言語を学ばさせれば気が済むのだろう、意味のわからない言語のシャワーを浴びせらる毎日に疲れた僕は、放課後、アジアを感じるべく中華屋へ向かった。大学の正門からぐるっと半周して裏門側にあるひっそりとした中華屋。
半地下の店構え、階段を降りて扉を開ける。
добър ден!
ここはやはり東欧でブルガリアだ。
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