第95話 お引っ越し 

 夫が、施設お引っ越し致しました。

 でもまだまだ、環境は整っておりません。トイレの手すりの工事が間に合わなかったようです。右手しか使えないのに、トイレの手すりが左にしかなくて、介護士さんに夫の全体重がかかってしまい大苦戦。

 たまたまそこに、私が用事を済ませて帰って来ました。


 コンコン(一応ノック)して、ドアを開けます。

 中から看護師さんが「あぁ~、手伝って下さい」と、私にヘルプ。

「わぁ~、良いタイミングで帰ってきましたね、私」


 呑気な私の反応に「あぁ、すみません。奥様でしたか。私、介護士と間違えてしまって」と恐縮する介護士さん。でも、夫の体が斜めになっていて危ない状態。

 

「私、どうすればいいですか? とりあえず(邪魔になっている)車椅子をトイレから出しますね」

「お願いします!」


 そんな感じで、夫のトイレ終了。

 私は、この様子を見て確信しました。

 自宅介護、100%無理やん! 一緒にトイレで倒れる……


 その後、トイレから車いす。車いすからベッド。介護士さん頑張っておりました。私は、役に立たない……

 で、ベッドでも夫は自力で体制を直せないので、二人がかりで直します。介護士さんが頭の方、私が足元を持って、斜めになっている体を真っすぐにしました。

 う~ん。恐らく夫の介助は、基本二人になるかな。


 自力で動けない夫は、性格も若干変わりました。

 施設長さんからミニブーケを頂いたのですが、それを食べるふりをして笑いを誘ったのです。そんなひょうきんな行動は、見たことがなかったので「へぇ~」っと思いました。


 他には、思わず喧嘩になりそうな一コマも……

「そうそう実家の方、ようやくエアコンつけるよ~」

と私が言ううと

「今どき、エアコンつけていないなんて、みっともない」

 そう夫が言ったのです。


 さぁここからは、私の心の声です。

 鬼化していますので、気を付けて。


『はぁ? 私、数年前から実家にエアコンつけてあげた方がいいって言いましたよね? いらないって言ったのはあなたです。懐に入れたお金を親のために使うのを渋って、エアコンをつけなかったのはあなたですよ! つまり、みっともないのは、あんたの生き方なんじゃ~~~』


 そう思いましたが、夫は病気なんだからとグッと堪えました。

 エライ! (エライのか?)


 新しい施設では、良くも悪くも夫婦の会話が増えそうですよ(笑)




 



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