第61話 梅ちゃん妖怪化。その2
さてさて、二月に亡くなったおじさんにお線香をあげて、私と梅ちゃんは田舎の温泉宿に向かいます。
タクシーを呼んでもらおうと思いましたら、おばさんが「送ってやるから」と言ってくれました。
おばさん、一月に単身事故をして腰にコルセットを巻いております。高齢です。
『私は、タクシーがいいです』とは言えず、送ってもらうことに……
はい。何気に荒い運転で、無理やり右折しようとして、対向車にぶつかりそうになりました。はぁ、怖かった~
さすがの梅ちゃんもビビッておりました。
さて、宿に着いたら10畳ほどの和室に梅ちゃんを置いて、今度は父方のおじさんと対談です。18時過ぎ、お昼をおにぎり一個ですませた私はお腹が空いております。
時間的におじさんと夕飯かなと思っていたのですが、なんと注文したのはコーヒー一杯。
『おじちゃ~ん、ご飯食べるか? とか聞いてよー。おじちゃんがコーヒーしか頼まないなら、私もコーヒーしか飲めないやん』と、泣く泣くコーヒーを注文。
頭の中では、部屋に置いて来た梅ちゃんも気になります。
大人しく部屋にいてくれるだろうか? 大丈夫かな?
さて、みなさんは、どうして梅ちゃんを一人部屋に残しているのか気になりますよね。
それは、梅ちゃんが父方の親戚に縁を切られたからです。もう、顔も見たくないと言われております。親戚のみなさんの心中お察しいたします。私も血の繋がらない身内なら、そうしたでしょう。
久しぶりに対面したおじさん。
昔より小さくみえました。体調は、良くないようです。
宿のレストランで、子どものいないおじさんの死んだ後のことを相談します。
えー、嫁に行き他県に住む姪っ子の私が、なんでと思いますよね。
実はおじさん、近くに住む妹一家と仲違いをしてしまったのです。何度も仲直りするように助言はしましたが、もうこじれにこじれてしまい修復不可能。
そこで、このままではおじさんの亡きあと、全てが私に圧し掛かると危機感を抱きまして、その話に来たのです。
やはり、喪主を私にしようと思っていたようです。
が、私もそれは無理と断ります。
嫁いで家を出ていること。
倒れた夫は長男。
まだ、夫の実家のこれからが決まっていないこと。
そこで提案したのは、独身の私の妹。
姓が変わっていないので、おじさんの次の後継者にはなれると話しました。
妹を人身御供に差し出す私。
このことについては、妹とも何度も話し合いをしています。
実家を相続すると、田畑や土地は貰える。ただし、それ以上の厄介ごとはついてくる。さらに言えば、古い家屋の解体費用や永代供養代等で不動産を売ってもプラスになるのかマイナスになるのか……わからない。
それでも妹は、実家を継がないとは言わず悩み中。そこで、おじさんと話し合ってもらうことにしました。
おじさんのことを妹に任せることにした私は、これで一つ肩の荷がおりることになりました。
さて、レストランのラストオーダーまで、残りの時間30分。急いで部屋に戻ると、梅ちゃんは入浴中。
なんで~~~?
温泉に入らず部屋のユニットバスで?
シャワーカーテンを引かず、あちこち水浸し。
トイレ用のスリッパもずぶ濡れ…… はぁ。
「ねぇ、私ご飯食べに行って来るからね!」
「おらも行く!」
「えっ? ご飯食べられるの?」
「お腹は空いてねぇけど、行く」
「じゃ、ラストオーダーまで時間ないから急いで!」
なぜだ?
なぜ、入浴を途中で切り上げてまで、私の後をついてこようとするのだ?
これでは、親鳥のあとをついて歩くヒナと一緒ではないか……
新幹線からおりて葬儀会社に向かい梅ちゃんの互助会入会手続きを済ませ、母方の実家でおじさんに線香をあげて、宿では父方のおじさんと話し合い。
もう、私はボロボロなのだよ。
近くにはコンビニもない温泉宿なので、7時半までにオーダーしないとご飯も食べられない。どうして、「ゆっくりご飯食べておいで」と言えないのだろう……
まぁ、それが梅ちゃんである。
そう、ここまでは想定内であった……
続く。
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